食品加工残渣を亜臨界水処理する際のモデルとして、本研究では糖類に着目し、亜臨界水中での反応挙動を解析した。当初、亜臨界水処理の結果の予測を試みたが、人工知能(AI)による予測は困難であった。そこで、亜臨界水中での糖類の反応挙動を解析し、希少糖生産プロセスの開発にターゲットを変更した。 還元糖を亜臨界水処理する際には異性化が起こり希少糖が生成するが、従来は低収率であった。そこで、緩衝液を添加し、添加物が異性化挙動に及ぼす影響を検討し、希少糖の生成挙動を解析した。最終年度は、それをさらに改善する目的で卵殻あるいはその構成成分を添加し、希少糖生成に及ぼす挙動を解析した。その結果、緩衝液中や卵殻添加で還元糖が容易に異性化し、各種希少糖が生成した。また、副反応により有機酸が生成し、pHが低下することで異性化が阻害される問題があった。しかし、卵殻により副生する有機酸を中和することにより、希少糖の収率を改善できた。さらに、卵殻からカルシウム塩が溶出することで、溶液中のカルシウムイオン濃度も高めることができた。 この溶液は水溶性カルシウム塩と希少糖の双方を含む新規機能性食品素材ともなり得ることが示唆される。このようなミネラルと希少糖を含む食品原料の製造技術が実用化され、産業的にも提供できるようになれば、健康増進社会の推進に資する。また、亜臨界水処理およびそれに関連する技術の革新と関連産業の発展にも寄与できる。
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