研究課題
大腸粘液層の脆弱化は大腸がん発症に関与することから,粘液層を強固に保つことが大腸がん予防において肝要である.申請者はこれまでに,抗酸化経路と腸管疾患に関する研究を展開しており,中でも抗酸化酵素群の発現を制御する転写抑制因子であるBach1に着目している.本研究は,これら一連の成果の中で見出された「Bach1欠損に伴う大腸粘液分泌の亢進」という現象を発展させ,Bach1が大腸粘液の性状を制御する様相を分子レベルで解析し,大腸がん予防におけるBach1制御の意義について明らかにすることを研究目的とした.これまでの研究経過において,Bach1欠損マウスでは,腸ムチンの糖鎖修飾様式が変化することを見出しており,その結果として,大腸ゴブレット細胞からのムチン分泌経路に異常が生じている可能性を示した.令和5年度においては,①Bach1の発現制御がムチン糖鎖修飾を変化させる仕組み,②Bach1欠損マウスにおけるムチン分泌能,上記2点を明らかにすることを目指し研究をおこなった.①に関しては,レンチウイルスシステムを用いてBach1の発現が恒常的に低下したLS174T細胞株(Bach1KD)を樹立し,ムチン糖鎖の修飾に関わる酵素群の発現を調べた.その結果,Bach1KDにおいて発現が変化するいくつかの酵素を見出した.一方で,ムチン分泌能の評価に関しては,マウス大腸を用いたin vivo腸管灌流法の確立には至らなかった.代替法として,ムチン分泌能を有するヒト大腸がん細胞株であるHT29-MTX-E12細胞を用いたin vitro試験を実施している.
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