研究課題/領域番号 |
21K05473
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
谷岡 由梨 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (30553250)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Synechocystis sp. / ビタミンB12 / シュードビタミンB12 / B12生合成経路 |
研究実績の概要 |
2050年には世界人口は93億人に達すると推測され、人口増加に見合った食糧増産が見込めず食料危機に陥ると危惧されている。対策として、植物性食品や昆虫食などを用いた代替え食品が開発されているが、動物性食品を主要な供給源とするビタミンB12(B12)は、必須栄養素であり、植物性食品の代替え食品ではB12不足、欠乏状態となることが予想される。そこで、将来の植物性食品由来のB12供給資源確保を目指して、B12合成能を有するラン藻の創出を行うことを目的とした。 食用ラン藻の唯一の栄養欠点は、ビタミンB12ではなくヒトにおいてビタミンとして機能しないシュードB12を合成することである。食用ラン藻、特にスピルリナへの形質転換に関する報告は散見され、いまだ汎用的な形質転換技術は確立されていないのが現状である。 本研究では、まずはシュードB12からB12合成に必要な遺伝子を同定するために、実験モデルラン藻Synechocystis sp. PCC6803を用い、シュードB12合成経路からB12合成経路への変換に重要な遺伝子の同定を試みた。B12合成に必要と考えられる候補遺伝子(bluB, cobT)を発現させた形質転換株を作成し、B12化合物の同定を行ったが、精製量不足のため完全な同定には至らなかった。したがって、今後、解析に十分な量を得るためにさらに培養を継続し、再分析する予定である。また、当初の研究計画にはなかったが、Shinorizobium melilottiのBluBと相同性を有するラン藻(Fisherella sp.)を見出した。このラン藻の新規食資源としての可能性を追求するために、B12化合物の同定を行ったところ、その主要なB12化合物はシュードB12であるものの、真のB12が一部含まれることを示唆した。今後、食資源としての可能性を探るために、栄養価についても検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルラン藻へのB12合成候補遺伝子を導入した形質転換株のB12化合物の同定は、精製量不足に起因するため、精製量が十分得られれば、今後同定できると考えている。また、ラン藻FissherellaのB12化合物は、一部真のB12が合成されていることを示唆した。モデルラン藻や非食用ラン藻のB12化合物の同定を行い、B12合成に重要な遺伝子を同定することは研究期間内に明らかになると考えており、おおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
形質転換系が確立されていない食用ラン藻スピルリナは、形質転換効率の検討を行う必要があり、GFP遺伝子を含むコンストラクトを作成している。コンストラクトが完成次第、形質転換の検討を行う。また、B12化合物の完全な同定には至らなかったPCC6803形質転換株とBluBと相同性を有するラン藻FissherellaのB12化合物の同定を行うとともに、新規食資源としての可能性を追求するために、栄養成分等も分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、当該年度で購入したい消耗品と購入額が一致せず生じた。翌年度分の消耗品費額と合算することで、計画的に使用していく予定である。 購入予定物品は、主に遺伝子実験用試薬やB12定量用培地、プラスチック器具類である。また、遺伝子解析に必要なプライマーやシークエンス解析に使用する予定である。
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