研究課題/領域番号 |
21K05475
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
長田 恭一 明治大学, 農学部, 専任教授 (30271795)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 植物ステロール / 酸化植物ステロール / 脂肪酸代謝 / ラット |
研究実績の概要 |
酸化植物ステロール(OPS)の生体に与える影響については未知な点が多い。本研究では、昨年の結果を踏まえて食事由来OPSの脂肪酸代謝に及ぼす影響を詳細に検討した。4週齢のWistar系雄性ラットにAIN76純化基準飼料を与えた群を対照群、基準食に植物ステロールを0.5%添加した飼料を与えた群をPS群、基準食にOPS混合物を0.5%添加した飼料を与えた群をOPS群として1週間飼育した。飼育後、コレステロール及び脂肪酸代謝に関わる種々のパラメータを解析した。その結果、成長パラメータについて、他群と比べてOPS摂取で体重増加量及び総白色脂肪組織重量が有意に低くなった。また、血漿総コレステロール(TC)レベルは、他群よりもOPS摂取で有意に低くなり、肝臓TCレベルは、対照群と比べてPS及びOPS摂取で有意に低くなった。肝臓トリアシルグリセロールレベルも他群と比べてOPS摂取で有意に低くなった。昨年の結果同様に肝臓のアラキドン酸(20:4 n-6)の割合は、OPS摂取で他群よりも有意に高くなり、Δ6 不飽和化指数も有意に高くなった。必須脂肪酸代謝酵素である肝臓FADS1及びFADS2遺伝子発現レベルは、他群よりもOPS摂取で有意に高くなり、肝臓FADS1タンパク質発現レベルは、OPS摂取で高くなる傾向となった。肝臓FADS2タンパク質発現レベルは他群よりもOPS摂取で有意に高くなった。OPS摂取によるこれらの変化が肝臓のアラキドン酸の割合増加に関わったことが明らかとなった。以上のことから、OPSの摂取により、PS摂取と同様に肝臓のTCが低下すること、一方、PS摂取の場合と異なり、必須脂肪酸代謝が変化し、アラキドン酸の割合が増大することが明らかとなった。アラキドン酸はエイコサノイドの基質であるため、生体内のエイコサノイドバランスが変動する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化植物ステロールの投与条件や投与期間を変えたが、昨年の研究結果の再現性が得られた。また、脂肪酸代謝に関わる遺伝子発現やタンパク質レベルの変動についても酸化植物ステロール摂取の影響を明らかにすることができ、メカニズムの一端が判明した。現在、個々の酸化植物ステロールの中で比較的入手しやすい分子種の酸化物を作成し、動物に投与試験を行っている。以上の様に概ね順調に進行していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
植物ステロールの吸収に関わるトランスポーターをノックダウンした細胞を作成して酸化植物ステロールの吸収メカニズムを調べたいと考えている。 また、植物ステロールの吸収と排出に関わるトランスポーターの発現レベルが異なるラットに酸化植物ステロールを投与して、それぞれのラットにおける酸化植物ステロールの吸収性の違い、ならびに脂質代謝への影響を調べたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、酸化stigmasterolの動物投与試験が2024年2月に開始したため、年度またぎの研究進行になったためである。 研究費は、上記の研究の遺伝子解析ならびに脂質分析の試薬費として執行する。また、2024年度に配分される研究費は年度研究計画に基づいて執行する予定である。
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