前年度にマダイについて熟成の効果を調べ,肉中のグルタミン酸が2週間の熟成期間中に3倍に増加すること,肉からのエキス抽出性についても熟成肉の方が抽出されやすいという結果を得たことから,今年度は赤身魚で熟成中に血合肉の変色が危惧されるブリについて熟成中の外観,エキス抽出性,呈味成分の変化を調べると共に,熟成の有無が官能評価に影響するか否かについても検討した。 塩化ナトリウムによる塩締め,脱水シートによるドリップの吸収,脱酸素剤による残存酸素の除去の効果を明らかにするために,無処理の対照区と一緒に熟成を行った。 皮付きフィレの状態で熟成させると,脱酸素剤を併用せず真空包装だけのものは併用したものに比べて血合肉のメト化によりフィレの外観が劣ったが,刺身状にスライスした場合はメト化の影響は認められなかった。塩化ナトリウムによる塩締めと脱水シートは熟成中のエキス成分の量に影響を与えず,エキス抽出性は1週間熟成させることで向上した。イノシン酸は熟成1日以降減少し,グルタミン酸は熟成1日で増加したが,それ以降は変化しなかった。官能評価の結果,官能検査項目の後味以外は有意差があり,硬さ以外は熟成7日が高い値を示し,熟成1日より7日が好ましいという結果を得た。 このことからマダイと同様にブリも熟成により呈味性が向上することが確認されたが,ブリでは熟成1日以降グルタミン酸の増加はなく,熟成の影響は魚種によって異なることも合わせて明らかとなった。
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