食品分野等で広く利用されている乳化分散において,液滴を微細化させ分散安定性を高める目的に乳化剤(界面活性剤)を添加する一方,多量の乳化剤の添加は製品の品質や風味の低減,安全性の低下を引き起こす。これらの課題に対し,乳化剤を使用しない,あるいは使用量を削減するための乳化分散技術が求められている。 本申請では,乳化剤に替わる素材としてウルトラファインバブル (UFB)を導入した乳化分散技術の研究開発を進めている。UFBとは 直径 1 μm以下で定義されている微細な気泡であり,通常の気泡とは明らかに異なる特徴を示すことが知られている。UFBはその微小さから長期間溶液中で分散することが確認されており,UFBは液中で単独で存在するよりも,そこに存在する油滴や固体に付着してより安定的に存在すると考えられている。更にUFBは弱酸性からアルカリ領域でマイナスの電荷を帯びることが分かっており,その帯電性(静電的な反発性)をもって合泡化が阻害される。本申請では,この現象を逆転的に捉え,連続相にUFBを加えて油滴を付着させ,UFBが持つ合泡阻害を乳化剤の代用とした利用を検討しており,UFBを導入した乳化分散技術を用い,乳化剤低減あるいは不要とする乳化分散安定化技術の検討を進めている。 今年度は,異なる気体種を用いたUFBエマルションの検討として、内包気体種を窒素とし、作製したエマルションの分散性および酸化抑制効果について評価をおこなった。その結果、UFBの有無で差異が見られ、さらに連続相中の窒素UFB比率を変化させると分散挙動に影響酸化抑制効果の可能性を確認した.
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