研究課題/領域番号 |
21K05480
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
田村 基 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 主席研究員 (70353943)
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研究分担者 |
中川 博之 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 高度分析研究センター, 上級研究員 (30308192)
平山 和宏 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (60208858)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ケルセチン / 腸内環境 / ケルセチン代謝菌 |
研究実績の概要 |
無菌マウス6匹にケルセチン代謝菌19-20と乳酸菌Lactobacillus reuteriを経口投与して、乳酸菌-ケルセチン代謝菌保有マウス19Lを作製し、無菌マウス6匹にケルセチン代謝菌19-20と乳酸菌Lactobacillus reuteri、Bifidobacterium pseudocatenulatumを経口投与して、ビフィズス菌-乳酸菌-ケルセチン代謝菌保有マウスBLを作製した。上記菌を投与後3週間は滅菌CMF食を給餌し、給餌終了後さらに0.05%ケルセチンを含む滅菌試験食を3週間給餌した。飼育試験後解剖を行い、内臓脂肪重量を測定し、肝臓、盲腸内容物、血液を採取した。血漿と盲腸内容物のケルセチン濃度は、LC-MS/MSを用いて分析した。また、盲腸内容物の短鎖脂肪酸分析、肝臓脂質等分析も行った。肝臓の脂質含有量、トリグリセリド含有量は二群の間で有意な差は認められなかった。血漿総コレステロールと血漿トリグリセリド濃度は19L群が低値を示した。盲腸内容物短鎖脂肪酸濃度は、19L群よりもBL群で高い傾向が認められた。BL群の酢酸濃度は19L群に比して有意に高値を示した。BL群には酢酸酸性菌のビフィズス菌が存在するため、盲腸内酢酸濃度がビフィズス菌のいない19L群よりも高かったと思われる。また、体重当たりの内臓脂肪重量は、BL群は19L群よりも少ない結果となった。血漿のケルセチン濃度は、19L群で有意に高値を示した。血漿イソラムネチン濃度は、大きな差は認められなかった。一方、盲腸内容物におけるケルセチン濃度は、有意差は無かったものの、BL群は19L群よりも高い結果となり、BL群は、19L群よりも盲腸内容物中のケルセチンの分解が抑制されている可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
盲腸内容物のケルセチン濃度はBL群が19L群よりも高い傾向があった。盲腸内短鎖脂肪酸濃度は、19L群よりもBL群で高かった。BL群の酢酸濃度は19L群に比して有意に高値を示した。BL群には酢酸産生菌のビフィズス菌が存在するため、盲腸内酢酸濃度がビフィズス菌のいない19L群よりも高かったと思われる。盲腸内容物の酢酸濃度は、ビフィズス菌の存在によって19L群よりもBL群で高まり、19-20株のケルセチン分解がある程度抑制された可能性がある。しかし、血漿のケルセチン濃度が19L群で高値を示したことから、盲腸内容物中の酢酸濃度が19-20株のケルセチン分解を抑制するほどには上昇しなかった可能性もある。盲腸内容物の酢酸濃度を上昇させる菌の組み合わせを考える必要があるかもれしない。今回、乳酸産生性の乳酸菌を19-20株とともに投与したが、乳酸菌の乳酸が19-20株のケルセチン分解や吸収に影響を及ぼしているのかもしれない。乳酸菌が19-20株のケルセチン分解や吸収に及ぼす影響を検討する必要があるかもしれない。
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今後の研究の推進方策 |
盲腸内短鎖脂肪酸濃度は、19L群よりもBL群で高い傾向が認められた。BL群は、19L群に比して酢酸濃度が有意に高値を示した。しかし、ケルセチン分解菌のケルセチン分解抑制を期待する場合、消化管において、かなり高い酢酸濃度が必要だと思われる。今回の動物試験では、盲腸内容物中の酢酸濃度が19-20株のケルセチン分解を抑制するほどには上昇しなかった可能性もある。そこで、次年度の試験では、餌にケルセチンとフラクトオリゴ糖を添加した餌を作製し、この餌を19-20株と乳酸菌等の菌を定着させたノトバイオートマウスと19-20株と乳酸菌等の菌、ビフィズス菌を定着させたバイオ―トマウスとに投与して、盲腸内容物中の酢酸濃度をさらに高めた状態での血漿ケルセチン濃度や盲腸内容物のケルセチン濃度を比較検討して、腸内環境とケルセチン代謝・吸収の関連について検討していく予定である。一方、盲腸内容物の酢酸濃度を上昇させる菌の組み合わせを他にも考える必要があるかもれしない。in vitroの培養試験において、酢酸産生を高めて、ケルセチン分解菌の分解性を抑制する菌の組み合わせについての検討も必要であろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、ビフィズス菌+ケルセチン分解菌19-20株投与マウスに、ビフィズス菌の酢酸産生を向上させるような餌を与えて、腸内環境の酢酸を高めた状態でのケルセチンの代謝・吸収を検討することを考えたが、ビフィズス菌の酢酸産生を向上させるような餌を与えてケルセチンの代謝・吸収を検討する試験を次年度に行うこととなったため、その経費が次年度使用額となった。
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