研究課題/領域番号 |
21K05488
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
渡辺 文雄 鳥取大学, 農学部, 教授 (30210941)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 脱アミド型ビタミンB12 / ビタミンB12 / 魚卵加工品 / 魚発酵食品 / 魚醤油 |
研究実績の概要 |
我々が日常的に摂取しているエビなどの甲殻類とその加工食品に多種類の脱アミド型ビタミンB12が多量に含まれていることを世界で初めて見出した。しかし、我が国のビタミンB12(B12)の供給源であるその他の魚介類や畜肉などの動物性食品における存在分布は不明である。また、脱アミド型B12がヒトの生体に及ぼす影響や細胞内代謝についても不明であり、日常的に脱アミド型B12を摂取することがB12の腸管吸収を妨げ、細胞内でB12の代謝系を阻害することになれば、B12欠乏性疾患(神経障害)の発症が危惧される。そこで、食品に含まれる脱アミド型B12を質量分析により精密に分析すると共に多種類の脱アミド型B12を大量に調製し、B12依存性酵素に及ぼす影響を分子レベルで検討し、生体に及ぼす影響を解析する。 本年度は、日本人にとってB12の良い供給源である魚介類の加工品及び発酵食品に脱アミド型B12が含まれているかどうかを検討した。まず、たらこなどの魚卵加工品からKCN加熱抽出法に従いB12化合物を抽出した後、Sep-Pak C18カートリッジを用いて濃縮・脱塩した。その後、B12抗体カラムを用いてB12化合物を特異的に精製し、HPLCによりB12を定量すると共にLC-MS/MS分析によりB12化合物の同定を行った。市販されている魚卵加工品であるたらこ、いくら、からすみ、キャビアに含まれる主要なB12化合物はいずれもB12であり、脱アミド型B12は検出されなかったことから、これらの食品はB12の良い供給源であることが明らかとなった。一方、発酵食品の魚醤油(ナンプラー)には約10%程度の多種類の脱アミド型B12が含まれていることが明らかとなった。また、くさやなどの発酵食品には脱アミド型B12以外に下方配位子の塩基を異にするコバミドも検出された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本人にとってB12の良い供給源である魚介類の加工品である魚醤油(ナンプラー)に脱アミド型B12が含まれていることを世界で初めて明らかにした。また、その他の魚発酵食品には脱アミド型B12は含まれていなかったが、下方配位子の塩基を異にする不活性型B12が含まれていることを明にした。また、次年度で使用する多種類の脱アミド型B12化合物の調製も達成できたことから、年次計画通りに順調に計画が進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き食品中に脱アミド型B12が含まれているかどうかをLC-MS/MSなどを用いて解析すると共に培養細胞やヒトのモデル生物として利用されている線虫などを用いて脱アミド型B12の生体に及ぼず影響について検討する。まず、脱アミド型B12が細胞内に吸収され、補酵素として利用されるかどうかを生化学的・分子生物学的手法で検討する。
|