研究実績の概要 |
5,7,3’,4’-(tetra-methoxyflavone: TMF)を大腸癌モデル動物APC変異マウスへの長期間経口投与により、APC変異マウスの体重減少が著明に抑制されることを見出していた。7,8,3’,4’-TMFの経口投与においてもAPC変異マウスの体重減少の抑制効果を認めた。果皮に多く含まれることで知られるノビレチン(メトキシ基が6つ、β-カテニン経路を抑制しない)を用いて経口投与を行ったところ、5,7,3’,4’-TMFや7,8,3’,4’-TMFと同様にAPC変異マウスの体重減少が抑制された。従って、フラボノイドによるAPC変異マウスの体重減少抑制には、β-カテニン以外の経路が関与していることが分かった。野生型とAPC変異マウスでは食餌摂取量に変化はなく、メトキシフラボンの投与によっても食餌摂取量に変化がないことが明らかとなった。APC変異マウスの小腸では異型腺管を認め、この部位では、通常β-カテニンシグナルの直接の標的とされるc-Mycの発現とβ-カテニンの核蓄積は一致せず、同一細胞内でcyclin D1がβ-カテニンシグナルにより誘導されていた。またβ-カテニンが蓄積している細胞の近傍において、がん化のマーカーであるERK1/2の活性化を認めた。APC変異マウスの肝臓では、中心静脈を取り囲む肝細胞に含まれるグリコーゲンの量が低下しており、何らかの糖代謝異常が生じていた。肝臓での糖代謝に関与するグルコース-6-ホスファターゼ(G6PC)の発現量を解析したところ、APC変異マウスで著明に低下していたが、両TMFの投与群においてAPC変異マウスのG6PCの発現量に影響を与えなかった。肝臓での解糖系の律速酵素であるホスホフルクトキナーゼ(PFKL)の発現量を解析したところ、APC変異マウスで増加していた。両TMFの投与でAPC変異マウスで認めたPFKLの増加が抑制された。
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