研究課題/領域番号 |
21K05497
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
堀籠 智洋 東北大学, 農学研究科, 助教 (10771206)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リボソームRNA遺伝子 / rDNA / 核膜 / 老化 / 若返り |
研究実績の概要 |
課題1 核膜結合がrDNA安定化および細胞老化抑制に果たす役割の解明: 2022年度には、リボソームRNA遺伝子(rDNA)においてDNA二本鎖切断を誘導した時のコヒージョン形成と核膜の位置関係を、顕微鏡を用いて定量解析した。解析では、rDNA反復配列の1箇所にI-SceI切断部位とtetO配列を導入した株を用い、ガラクトースによりI-SceIエンドヌクレアーゼを発現誘導し、その切断部位をTetI-mRFPにより可視化する株を用いた。通常、DNA複製後のDNA二本鎖切断部位は、コヒージョンにより1つの赤色蛍光輝点として観察されるが、コヒージョンに欠陥がある細胞では2点として観察される。コヒージョンが確立した細胞(輝点1つ)では、コヒージョンが確立していない細胞(輝点2つ)の細胞と比べて切断部位が核膜に近接している傾向があることが分かった。 核膜結合によるrDNA安定化の作用点を遺伝学的に同定するため、fob1 nup120二重破壊株を構築した。現在sir2 nup120二重破壊株を作製しており、完成後、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)でrDNAの安定性に関する遺伝学的解析を行う。 課題2 老化細胞における核膜でのゲノム安定化についての解析: 野生株の酵母細胞をビオチン標識した後に分裂を繰り返させて細胞を老化させ、ストレプトアビジン磁性ビーズにより老化細胞(平均3~4回出芽)を選別した。若い細胞と老化細胞においてMAT遺伝子座にHOエンドヌクレアーゼによるDNA二本鎖切断を誘導し、核膜とDNA二本鎖切断部位の位置関係を定量的顕微鏡法により解析した。若い細胞と老化細胞いずれにおいても切断誘導前後にその領域が核膜に移動する現象が観察され、老化細胞であっても損傷DNAの核膜への移動は維持されていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症のまん延が続いており研究活動が一部制限されている状況が続いている。そのような中でも以下の成果を得ており、研究はおおむね順調に進展している。 課題1については予定していた目的の主要な部分を達成して論文としてまとめている段階であり、予定よりも早い進捗である。 課題2についてもおおむね順調に進展している。なお本研究と類似性の高い研究がカナダのグループによりなされ、2022年に発表された(Mojumdar et al. J Mol Biol, 434:167798 (2022))。主要な部分の結論は我々の実験結果と同じであったが、我々はこの論文で報告のなかったrDNA領域での損傷DNAの核膜移行についての研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
課題1: rDNAが不安定になるsir2破壊とnup120破壊との二重変異株を作製し、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)でrDNAの安定性に関する遺伝学的解析を行う。 課題2: 老化細胞におけるrDNAでのDNA二本鎖切断の核膜移行をZoning法と呼ばれる定量的顕微鏡法により解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由: 実験の結果マイクロ流路を用いた老化細胞取得が技術的に安定しないことが分かり、代替法として設定していたビオチン、ストレプトアビジン磁性ビーズなどを用いた方法に大部分の解析を切り替えたため、物品費の支出が少なくなった。また参加予定であった学会がオンライン開催となったため旅費の必要がなくなった。 使用計画: 次年度はビオチン、ストレプトアビジン磁性ビーズなどを用いた解析を当初予定よりも多く実施する予定である。そのための物品費が必要となる。
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