研究課題/領域番号 |
21K05499
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
石井 智浩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (60549947)
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研究分担者 |
中田 隆夫 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50218004)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オプトジェネティクス / 光遺伝学 / 破骨細胞 / 細胞分化 |
研究実績の概要 |
破骨細胞は造血幹細胞由来の単球・マクロファージ系前駆細胞から分化誘導され、多核化し、骨吸収能を持つ成熟した破骨細胞になる。破骨細胞分化シグナルの異常は、骨量の異常増大等の様々な疾患につながることが知られている。本研究では新規光遺伝学ツールを用いて光により破骨細胞の分化誘導を行うシステムを開発し、細胞内シグナルの詳細を明らかにすることを目的としている。成熟破骨細胞分化の程度は、酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)活性および細胞融合による多核化を指標として評価する。破骨細胞分化誘導シグナルに関わるタンパク質に植物由来の光応答ドメインを融合した光スイッチタンパク質を複数デザインした。最初にヒト胎児腎細胞293に遺伝子導入して光に対する応答をライブイメージングで確認した。応答の良い光スイッチタンパク質を選択し、組み換えレトロウイルスを用いて破骨前駆細胞にそれらを安定的に発現させた。さらに発現の高い均一な細胞集団を得るために、細胞のクローン化を行った。得られた光スイッチ発現細胞を効率よく分化させる条件検討を詳細に行った。例えば光照射に関しては、照射時間や照射頻度を様々に変えるなどの条件検討を行った。光による分化誘導をインキュベーター内で数日にわたり行った後、TRAP染色によりTRAP活性の評価および顕微鏡観察による多核化の評価を行った。最終的にTRAP陽性になる光スイッチタンパク質発現細胞を4種類得ることができ、その中で2種類が効率よく多核化成熟破骨細胞にまで分化が進んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の1年目の最大の到達目標は、光により破骨細胞分化を誘導するシステムを構築することであった。様々な光スイッチタンパク質を作製しその中から候補となるものを選び出すこと、様々な培養条件を試し至適条件を探し出すことに多くの時間を費やし、最終的に光により成熟破骨細胞を誘導することができた。本研究の大きな山場を乗り越え、前進することができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今回の実験ではTRAP活性と細胞の多核化を指標として細胞分化を評価したが、これが正常な分化なのか、あるいは本来の分化とは異なる部分があるのかを詳細に解析を行う必要がある。分化初期ではさまざまな細胞内シグナル分子のリン酸化が正常に行われているかを解析する。また定量PCRにより分化段階に応じて遺伝子発現が正常に行われているかを確かめる。分化した細胞の機能として骨吸収機能があるかどうかを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加予定の学会がオンライン開催になったため、旅費がかからなかった。これについては次年度の学会参加で使用する。 物品費については、生化学実験や定量PCR実験用の費用が一部残ったが、これは次年度に同じ目的の実験に使用する。
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