研究課題
ミトコンドリアを選択的に分解するマイトファジーは、酵母からヒトまで広く保存されたミトコンドリアの品質管理機構である。酵母において、カゼインキナーゼ2によるミトコンドリア外膜タンパク質Atg32のリン酸化はマイトファジーの進行に必須であり、このリン酸化はPpg1-Farホスファターゼ複合体によって拮抗的に阻害される。また、リン酸化Atg32が集積する部位がミトコンドリア分裂因子X依存的に局所的に分裂し、最終的に液胞内で分解される。本研究では、①Atg32のリン酸化制御機構、②ミトコンドリア分裂機構、③分解標的となるミトコンドリアに含まれる因子を解明することを目的としている。2021年度は、Atg32のリン酸化制御において重要な役割を果たすFar複合体(Far3-Far7-Far8-Far9-Far10-Far11)のコアタンパク質であるFar8に着目した。His6タグを付加させたFar8の全長もしくは部分変異体を大腸菌で発現・精製し、GST-Atg32とのGSTプルダウンアッセイを行った。その結果、Far8のC末領域のWD40リピートドメインがAtg32と直接結合することが明らかとなった。また、マイトファジー特異的なミトコンドリア分裂因子Xの機能解析を進めた。分裂因子Xのアミノ酸置換もしくはデリーション変異体を多数作製し、分裂活性に重要なアミノ酸残基を複数同定した。分裂因子Xの研究過程において、そのオルソログと考えられる分裂因子Yを見出した。分裂因子Xと分裂因子Yの構造が類似していること、分裂因子Yの過剰発現によって分裂因子X破壊株のマイトファジー欠損が部分的に抑制されたことから、両者はオルソログであると結論付けた。
2: おおむね順調に進展している
分裂因子Xの論文のリバイズが終了したこと、分裂因子Yを見出したことなどから、おおむね順調に進展していると判断した。
Atg32とFar8、Atg32とFar複合体の結合状態の構造解析に向けた準備、および、分裂因子Yの詳細な機能解析を進める。
当初予定していた抗リン酸化抗体の外注や学会参加を取りやめたため、未使用額が生じた。2022年度は、酵母用の培地と消耗品、タンパク質解析試薬、DNA解析試薬に加えて、成果を論文発表および学会発表するための費用に使用する。
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Journal of Cellular Physiology
巻: 236 ページ: 7612-7624
10.1002/jcp.30404
https://www.med.niigata-u.ac.jp/mit/