研究課題/領域番号 |
21K05507
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
関藤 孝之 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (20419857)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 液胞 / トランスポーター / オートファジー / TORC1 / Saccharomyces cerevisiae |
研究実績の概要 |
・近位依存性ビオチン化タグAirIDを付加した液胞アミノ酸トランスポーターAvt4を発現する細胞をビオチン添加培地で培養し、ビオチン化ペプチドを質量分析によって同定したところ、液胞膜局在性のタンパク質やTORC1関連のタンパク質のビオチン化が検出された。TORC1関連遺伝子破壊株のウエスタンブロット解析においてAvt4のリン酸化状態の変化を検出したことからAvt4がTORC1下流で調節される可能性が示唆され、結果を学会にて発表した。 ・Avt4とは逆向きに、Avt1はアミノ酸を液胞内に取り込むにも関わらず、Avt4同様、飢餓条件でGATA因子依存的に発現が誘導されることを見出した。さらにクロマチン免疫沈降実験によりGATA転写因子が直接的にAVT1の転写を調節することが示唆された。またAvt1タンパク質レベルもGATA転写因子依存的に増加しており、これらAvt1の細胞内レベルの調節について結果をまとめ学会で報告した。最近、Avt1が細胞中のアミノ酸ストレスの緩和に働くことで細胞寿命に寄与する可能性が報告され、Avt1の発現誘導との関係性について現在解析を進めている。 ・出芽酵母の新規液胞アミノ酸トランスポーターとして当研究室が報告したVsb1の分裂酵母ホモログSpVsb1の液胞膜局在を明らかにし、その遺伝子破壊および過剰発現による液胞内塩基性アミノ酸含量の変化を検出することにより、機能的にも保存されていることを明らかにした。さらに、出芽酵母Vsb1において液胞内への塩基性アミノ酸蓄積に必須な保存アスパラギン酸残基(D223)に相当するSpVsb1のD174のアラニン置換が分裂酵母液胞内の塩基性アミノ酸含量を著しく低下させたことから、種を越えてアミノ酸輸送に関わる重要アミノ酸残基であることが示唆され、これら結果をまとめて論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・近位依存性ビオチン化タグAirIDを付加することにより、Avt4の相互作用タンパク質候補を多数同定している。相互作用は共免疫沈降実験によって確認中であるが、一過的もしくは弱い相互作用と考えられ、明瞭な結果は得られていない。そこでBiFCによる相互作用検出も並行して進めており、弱いながら安定に蛍光を検出できている。現在コドン使用頻度をもとに酵母での発現に最適化したyeVenusを使用し、その分断箇所も複数パターンでベクターを構築中であり、より安定に感度良く相互作用を検出できる実験系を確立する予定である。 ・オートファジー活性の評価系としてマーカータンパク質であるAtg8以外のサイトゾルタンパク質へのGFPタグ付加を進めているほか、アミノ酸リサイクル欠損によるタンパク質合成活性への影響評価についても実験系を確立しつつある。さらにミトコンドリア機能への影響についてはTTC重層法に加え、フローサイトメーターによる評価系を試行中である。これら新たな実験系については本年度中には結果が得られる予定である。 ・液胞アミノ酸トランスポーター多重欠損によるリサイクル欠損と中性アミノ酸合成遺伝子破壊を組み合わせたが、窒素飢餓条件で生存率低下を示すものは見つかっていない。このことから、依然未同定の液胞アミノ酸トランスポーターが存在する、もしくはアミノ酸以外の分解産物のリサイクルが生存に寄与している可能性が考えられる。そこで、これら多重欠損株のマイクロアレイ解析により窒素飢餓条件での生育に重要な遺伝子の探索を進める予定である。またセリン合成系で重複してはたらく3つの遺伝子を破壊しセリン要求性とし、さらに液胞アミノ酸トランスポーターも多重欠損した株を作成しており、定常期での呼吸生育におけるオートファジーセリンリサイクルの重要性について検討可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
・TORC1活性とAvt4の関係性を検討するにはTORC1因子との相互作用を欠損した変異型Avt4の単離が必須である。そこで相互作用を検出するための手法の確立に注力する。現在、共免疫沈降実験の条件設定を進めているが、操作中のタンパク質分解が著しく明瞭な結果が得られていない。BiFCとGST pull downも試行しており今後これをさらに進め実験系の確立を目指す。Avt4以外の液胞アミノ酸トランスポーターへのビオチン化酵素タグの付加も進めており順次ビオチン化ペプチドの同定作業を開始する予定である。特にBiFCは簡便であり、ビオチン化標識による相互作用タンパク質同定の確認用ツールとしてベクターセットを整備したい。 ・簡便なTORC1活性評価系導入も重要課題となっている。現行ではHAタグ融合Sch9をNTCB処理し、生じたSch9-HA C末端断片のリン酸化状態を評価している。しかしこの方法は切断効率・タンパク質収量が試料によって変化することがあり、部分的なTORC1活性の変化を評価することが困難である。現行手法の条件検討により改善を試みると同時に別のマーカータンパク質使用を検討したい。さらに抗リン酸化Sch9抗体の作成にも着手する。また、マイクロアレイ解析をできるだけ早期に実施し、栄養情報伝達における液胞の役割について多角的な検証を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の購入に充てるためには残額が少額であるため、次年度の物品購入に加えることにより効率的に使用したい。
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