研究課題/領域番号 |
21K05511
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
野村 俊尚 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (20722771)
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研究分担者 |
松島 良 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (80403476)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ユーグレナ / パラミロン / 貯蔵多糖 / ゲノム編集 / 形態形成 |
研究実績の概要 |
前年度に実施したショットガンプロテオーム解析で検出されたタンパク質の内、糖結合ドメインを有するタンパク質などパラミロン粒形成との関連が想定される候補遺伝子を標的にしたゲノム編集での変異導入を行なったが、パラミロン粒形態に顕著な変化が見られるものは見出せなかった。一方、前年度の研究結果から、パラミロン合成レベルの調整が顆粒の形状制御に関与する可能性が示唆されていたため、その検証のための実験を行なった。パラミロン合成酵素(EgGSL2)タンパク質を検出するために、タグ配列をC末にノックインした株をゲノム編集法を用いて作出し、タグ配列用抗体でEgGSL2タンパク質を検出できる株を作出した。さらに、タグ配列付加GSL2発現株を用いた解析から、グルコース添加濃度に応じてGSL2タンパク質量が増加すること見出した。このとき、グルコース添加濃度に応じて、パラミロン粒形成が誘導されることも確認した。また、QRT-PCRによる発現解析の結果から、グルコース添加によりGSL2遺伝子発現が上昇することを確認した。 他方で、パラミロン粒形成を誘導したユーグレナ細胞の電子顕微鏡観察を行なった結果、形成中と推測される小-中型のパラミロン粒を電子密度の高い構造体が取り囲んでいる様子が観察された。この構造体は、観察した多くの細胞においてパラミロン粒周辺に高頻度に見られたことから、パラミロン粒形成に関与している可能性が示唆された。 また、本種におけるCas12a RNPを用いたゲノム編集技術の開発にも取り組み、高効率な変異導入や短鎖DNAノックイン、塩基書き換え手法の確立に成功し、ユーグレナにおける遺伝子改変技術を拡張させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の遂行により、候補遺伝子の探索について一部計画の変更が生じたが、本研究遂行のための基盤技術の拡充や新たな知見を得ることができたため、計画は概ね進められたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
パラミロン合成酵素遺伝子(EgGSL2)の発現量とパラミロン粒形態との関係性についての解析を、これまでに作出したゲノム編集株等を用いてさらに取り進める。今年度の研究からパラミロン合成酵素遺伝子発現が上昇する条件を見出せたことから、上記条件でのトランスクリプトーム解析を行い、パラミロン粒形成に関与する遺伝子候補の絞り込みを再度試みる予定である。また、パラミロン合成不全となるEgGSL2変異体株を用いて、電子顕微鏡観察を実施することで、パラミロン粒形成時に観察された細胞内構造物と合成酵素との関係性の有無を探りたいと考えている。
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