前年度に引き続き、ゲノム編集により作出したFLAGタグ付加EgGSL2(パラミロン合成酵素遺伝子)発現株を用い、ユーグレナ(Euglena gracilis)において、グルコース添加濃度に応じたGSL2タンパク質量の増加が引き起こされることの再現性を確認した。これにより本種において、グルコースによるパラミロン合成の制御機構が存在する可能性が高いことが明らかになった。そこで、上記のGSL2タンパク質量の増加が顕著であったグルコース添加条件と、グルコースの添加無しの対照区サンプルを対象に、RNA-Seq解析を行なった結果、数百の発現変動遺伝子を検出した。このうち、主に発現量が顕著に上昇した遺伝子に着目してゲノム編集実験を行い、パラミロン合成や顆粒形成に関わる遺伝子群を見出して行く予定である。また、パラミロン粒形成条件下での野生株およびパラミロン粒形成不能となるEgGSL2ノックアウト株を対象に、FE-SEM観察を行った。前年度に見出された野生型株で見られたパラミロン粒の形成誘導時に、その周囲を取り巻く、あるいは隣接する形で存在していた電子密度の高い細胞内構造物は、EgGSL2ノックアウト株においても、少なくとも完全に消失することはないことが明らかになった。他方で、前年度に続き、ユーグレナにおけるCas12a RNPを用いた標的ゲノム配列への高効率な変異導入や正確な塩基書き換え技術に関する結果データを拡充し、学術論文として発表した。 最終年度は、申請者の異動に伴う事情により、研究の進捗に大きな遅れが生じてしまったが、本課題の遂行のための基盤となるユーグレナのゲノム改変技術の拡充や実験条件、今後の進展に繋がる新しい知見や予備データの取得は十分に達成されたと考えている。
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