研究課題/領域番号 |
21K05515
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
松村 英生 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 教授 (40390885)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 性決定 / 雌雄同株異花 / ニガウリ / 全ゲノムリシークエンス / QTL / 雌雄比率 |
研究実績の概要 |
ニガウリ雌性型系統OHB61-5とOHB95-1A、OHB61-2, 0HB1-1との交雑後代であるF2集団における各個体の雌性花率から低雌花率、高雌花率の個体を選抜した。本年度はOHB61-5x OHB61-2及びOHB61-5xOHB1-1の各F2集団についてQTL-seqを利用した雌性花率に関するQTLの同定を行なった。これらのF2集団ではOHB61-5が有する劣性の雌性型遺伝子影響が強いため雌性花率が100%を示す個体と<5%を示す個体を除いた中で高雌性花率を示す個体と低雌性花率を示す個体を15-20個体ずつ選抜してDNAをバルク化したサンプルを解析に用いた。各バルクサンプルと両親系統の全ゲノムシークエンス解析を行い、QTL-seq pipeline (Takagi et al., 2013)を用いて解析した結果、OHB61-5xOHB61-2においては第6および第9染色体に、OHB61-5x OHB1-1においては第1及び第11染色体上に有意なΔSNP-indexを示す箇所が各々1箇所ずつ検出された。これらは各集団における雌性花率QTLと推測されるが、以前にOHB61-5x OHB95-1AのF2集団を用いた解析で得られた雌性花率QTLとは異なる箇所が検出されたことからニガウリについては多様な雌性花率QTLが存在し、それらはアリル及び遺伝子座間の相対的な組合せで表現型を示す可能性が考えられる。またニガウリ属における雌雄異株の表現型を示すナンバンカラスウリについて雌雄の各個体の分譲を受けて雌株の全ゲノムシークエンス解析を行う準備を進めた。このゲノム配列データを基に上記のニガウリで検出される遺伝子についてナンバンカラスウリにおける構造、発現などの解析を行い、雌雄同株異花と雌雄異株の相違との関連を明らかにする計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニガウリについては雌性花率に関するQTLを複数同定し、さらに極端な雌性花率低下(雄性への偏り)に関わる遺伝子座の同定へ向けた解析も開始できており、早々に同定が可能と見込んでいる。雌雄異株種であるナンバンカラスウリ(M.cochichinensis)に関しては育成が困難であったことから他研究機関の協力を得て雌雄個体のサンプリングを行い、ゲノムシークエンス解析へ進める準備ができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度同定した雌性花率QTLの候補遺伝子絞り込みを進めると共に、同F2集団を用いた極端な雌性花率低下(雄性化)の原因となる遺伝子座の同定を行う。また雌雄異株種であるナンバンカラスウリゲノムをロングリードシークエンスにより新規に構築し、別途解析を進めているOHB61-5の保有する雌性型遺伝子と共にこれらのニガウリにおける雌雄比率に関わる遺伝子のホモログの構造、発現を解析することで雌雄同株異花と雌雄異株との転換機構の推測を試みる。
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