研究課題/領域番号 |
21K05517
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研究機関 | 静岡県立農林環境専門職大学 |
研究代表者 |
森口 卓哉 静岡県立農林環境専門職大学, 生産環境経営学部, 教授 (80343945)
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研究分担者 |
齋藤 隆徳 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 助教 (20753479)
林田 大志 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (90802017)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リンゴ果皮色 / MYBアレル / 発現制御 |
研究実績の概要 |
リンゴ「陸奥」は青い果皮色を有するリンゴであるが、袋掛け処理により果皮色を赤くすることが可能となる。この原因は本来、機能がないとされるMdMYB1のアレル(MdMYB1-2/1-3)が、袋掛け処理により、エピジェネティックな変化(メチル化やヒストン修飾の変化)を受けて、機能がないMdMYB1-2とMdMYB1-3ともに転写可能な状態になるためである。そこで、昨年度に着色を誘導するに必要な最短の袋掛け処理の期間について、「陸奥」を用いて調査したところ、100日間の袋掛け処理期間でも慣行栽培と比べても統計的に有意差がなく、十分に着色できることが明らかとなった。さらに、詳細に調査したところ、慣行の除袋時期(10月1日)に除袋する慣行栽培管理と同等のアントシアニンを集積するには9月10日の除袋時期では早すぎ、9月16日の除袋日まで待つ必要があった。このように慣行の除袋日よりも約1週間程度早く除袋しても統計的には着色に有意な差異がないことが明らかとなった。また、「陸奥」以外の着色しない品種である「印度」、「弘大みさき」、「王林」、「シナノゴールド」、「金星」、「こうこう」、「きおう」、「きみと」、「ゴールデンデリシャス」、「トキ」について、小袋と大袋を掛けることで、品種間差異はあるものの、袋掛け処理により、より赤くすることが可能であったが、「ゴールデンデリシャス」については、袋掛け処理によっても無袋に比べて、有意に赤くすることが難しい品種であることが明らかとなった。さらに、年次によっても袋掛け処理しても着色が難しい品種も見出された。現在、機能のないMdMYB1-2とMdMYB1-3がともに青品種に袋掛け処理した果実で転写されているのか、その際にメチル化状態の変化が生じているかについて解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R4年7月に細心の注意を払って、千葉大に出張し、RNA抽出と材料の調整を実施した。また、R4年9月に中間成果検討のため、弘前大学藤崎農場で打ち合わせを行うことができた。このように、R3年度に比べ、新型コロナウイルスによる行動制限が緩和されたため、研究環境は改善された。しかし、核酸の抽出などで問題が発生し、何度も繰り返して実験を行ったため、全体的に予定よりは若干の遅れがある。現在その遅れを挽回すべく実験を進めている所である。
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今後の研究の推進方策 |
リンゴ青品種「シナノゴールド」については、弘前大学藤崎農場とは土壌条件などが異なる別の民間の圃場で袋掛け処理したが、弘前大学藤崎農場での結果と異なったため、今年度も民間の圃場で再試験を行う。また、「ゴールデンデリシャス」についても、R3、R4年度ともに弘前大学藤崎農場で実施したが、年次で結果が異なったため、再試験を考えている。これまでの2か年の調査から、青品種リンゴの中でも袋掛け処理による着色誘導能には品種間差の存在が示唆されたため、その要因についても考察する。千葉大学では、遅れが見られる以下の2つの実験、1)機能のないMYBアレルの袋掛け処理による転写の有無、2)その転写誘導にはメチル化が関与の有無、について早急に結果を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
WEB会議を活用することで検討会を効率的に進めることができた。そのため、弘前大や千葉大への出張回数を減らすことができた。R5年度は、最終年度であるため、弘前大学、千葉大学に赴いて、成果の取りまとめ方法や公表方法等、詳細な検討会を予定している。
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