研究課題/領域番号 |
21K05519
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
築山 拓司 近畿大学, 農学部, 准教授 (00423004)
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研究分担者 |
吉川 貴徳 京都大学, 農学研究科, 助教 (00721606)
谷坂 隆俊 吉備国際大学, 農学部, 教授 (80026591)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 転移因子 / イネ / エピジェネティック |
研究実績の概要 |
これまでの研究から、イネ熱帯ジャポニカ品種「おいらん」において非自律性転移因子mPingの転移を触媒する自律性因子Pingの活性はエピジェネティックに抑制されているが、温帯ジャポニカ品種「日本晴」を花粉親とする交雑後代(F1)ではその抑制が解除されることが明らかになっている。 今年度、おいらんと日本晴のF1では、いずれの品種を花粉親とした場合であってもPingのプロモーター領域のDNAメチル化が低下し、Pingの発現が上昇したことから、おいらんのPingはインプリンティング遺伝子ではないことが明らかになった。また、F1におけるDNAメチル化の低下は、Pingのプロモーター領域のみならず、Pingが隣接ゲノム領域においても生じている可能性が示唆された。おいらん由来のPingのみを有するF2個体を用いた解析の結果、Pingが有する2つのORFのうち、ORF1は世代を経ることでプロモーター領域が再度メチル化されていた。一方、F2には、Ping-ORF2の発現が高い個体と低い個体が存在したが、いずれの個体においてもORF2のプロモーター領域はメチル化されていないことが明らかになった。このことから、Ping-ORF2は、エピジェネティックだけでなく、遺伝的(ジェネティック)にも制御されていることが示唆された。 mPingが活発に転移している温帯ジャポニカ品種「銀坊主」は、Pingを7コピー有している。本年度、銀坊主と日本晴の交雑後代(GN-F4)の中から、いずれかのPingを1コピーのみもつ系統を選抜し、mPingの転移頻度を解析した。その結果、第1染色体の短腕に座乗するPing-1を有する系統において、mPingの転移活性が高いことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、①温帯-熱帯ジャポニカ品種間の交雑によるエピゲノム変化の解明、②位置効果で制御されるPingの同定、および③Pingを標的としたエピゲノムリプログラミングが生じる交雑組み合わせの検証を計画している。今年度は、①において、おいらんと日本晴の交雑後代で見られるメチル化の低下は、Pingのプロモーター領域のみならず、Pingが隣接するゲノム領域でも生じている可能性あることを明らかにした。また、②において、銀坊主が有する7つのPingのうち、第1染色体の短腕に座上するPing-1がmPingの転移を触媒する活性が高いことを明らかにした。これらのことから、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。しかし、③については、交配が上手くいかなかったことから、進展しているとはいえない。令和4年度は、交配する個体を増やし、全ての研究計画が遂行できるように努めるつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、まず、おいらんと日本晴のF1で見られたPing-ORF1のプロモーター領域のメチル化の低下がおいらんと日本晴のいずれのPingで生じているのかを、それぞれのPingに特異的なプライマーを用いたバイサルファイトシーケンスによって明らかにする。また、MspIとHpaIIを用いたAFLP(amplified fragment length polymorphism)解析と次世代シーケンサーを用いた全ゲノムバイサルファイトシーケンス(WGBS)によって、交雑とその後の自殖によって生じるDNAメチル化の変化をゲノムレベルで明らかにする。 令和3年度の研究により、Pingを7コピー有する銀坊主においては第1染色体に座乗するPing-1がmPing転移に大きく寄与していることが明らかになった。そこで、令和4年度は、Ping-1のみを有する系統におけるPingの発現量とDNAメチル化の程度を解析する。 おいらんや銀坊主が含まれている日本在来品種コアコレクション (JRC)の品種50種と日本晴、およびJRC間で交雑を行い、Pingを標的としたエピゲノムリプログラミングが生じる交雑組み合わせを同定するための材料を育成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
熱帯ジャポニカ品種「おいらん」と温帯ジャポニカ品種「日本晴」の交雑後代において生じるメチル化の低下がゲノム全体で生じているのかを明らかにするために、次世代シーケンサーを用いた全ゲノムバイサルファイトシーケンス(WGBS)を委託解析する予定であった。しかし、メチル化感受性制限酵素McrBCを用いた解析によってPingが隣接するゲノム領域においてもメチル化が低下している可能性が示唆できたため、WGBSの実施を見送った。今年度は、WGBSを実施するとともに、銀坊主のPingのメチル化程度をバイサルファイトシーケンスで、発現量をリアルタイムPCRで解析する予定であるため、助成金は計画どおり支出される見込みである。
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