本研究は、イネ活性型転移因子mPing転移を触媒する自律性因子Pingの活性がエピゲノムリプログラミングによって制御される機構を明らかにしようとするものである。 今年度、熱帯ジャポニカ品種「おいらん」と温帯ジャポニカ品種「日本晴」の交雑後代F2において、おいらん由来のPing(Ping-O)をヘテロで有する個体では、Ping-Oは低メチル化状態であったが、Ping-Oをホモで有する個体では、Ping-Oが高度にメチル化される個体とされない個体が存在することが明らかになった。 イネ品種「銀坊主」においてmPing転移を触媒する活性の高いPing-1は、他のPingとは異なり、Tc1/mariner様転移因子Pyongの内部に挿入されていることから、PyongがPing-1の発現を制御している可能性がある。昨年度に作出したPyong:GUSカセットを有する組換えイネを植物インキュベーターで栽培し、その葉身をGUS染色に供試したが、GUS活性は見られなかった。このことから、Pyongは通常栽培条件下ではプロモーター活性を有していないと考えられた。Pyong内部には、ストレス応答に関わるW-boxやMYB結合配列に加え、胚や種子での組織特異的発現に関わるRY-repeat配列が存在することから、Ping-1はこれらの配列によって、他のPingとは異なる発現特性を獲得した可能性がある。 本研究によって、日本晴との交雑によって脱メチル化されるおいらんのPing-Oは、後代においてホモ接合になることで再度メチル化されることが明らかになった。また、銀坊主が有する7つのPingの解析から、第1染色体に座乗するPing-1は他のPingとは異なる発現特性を獲得した可能性が示唆された。本研究の成果は、Pingの活性制御機構のみならず、エピゲノムリプログラミングを理解する新たな視点を提供するものである。
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