研究課題/領域番号 |
21K05520
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
宗景 ゆり 関西学院大学, 生命環境学部, 准教授 (30423247)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 細胞パターン形成 / C4植物 |
研究実績の概要 |
本研究では、C4型細胞パターン形成の分子メカニズムを解明することを目的とする。シロイヌナズナSCARECROW(SCR)を欠損するscr-3変異株の表現型を相補することが明らかになったC4種Flaveria bidentis FbSCR1の発現を維管束鞘細胞分化マーカーとしてGUS活性で可視化できる、pFbSCR1::GUS株を使用し、葉の発達初期におけるFbSCR1の発現パターンを解析した。FbSCR1の発現は、プロカンビウム細胞が維管束へ分化し視覚的に観察されるより早い時期に維管束鞘細胞で観察され、葉の伸長に伴い頂端部から基部へ向かってFbSCR1発現が網状に広がって見られた。この結果からC4種Flaveria bidentisでは、細胞分裂が盛んな領域で維管束が高密度に形成されていることが明らかになった。 シロイヌナズナSHORTROOT(SHR)と相同性が高いFbSHRsのうち、pFbSHR2::GUSは維管束で発現が観察された。DOF型転写因子をコードするFbDOF1A遺伝子のpFbDOF1A::GUS発現は葉の発達段階でpFbSHR2::GUSの発現より早く見られ、維管束形成に先駆けて発現していることが明らかとなった。pFbDOF1A::GUS発現は人工オーキシン添加により発現誘導されており、オーキシンシグナル下流で発現が制御されていることが示唆された。これらの結果を植物生理学会で報告した。また、Flaveria属のC3種、C3-C4中間種、C4様種、C4種における組織形態、光合成活性、電子伝達活性、細胞特異的なタンパク質発現比較解析から想定されるC4進化について解説した総説を国際誌に投稿し受理された(Munekage & Taniguchi, 2022)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
pFbSHR2::GUS導入株の作成に成功しており、pFbSCR1::GUS株およびpFbDOF1A::GUS株と比較解析可能であり、今後オーキシン応答性の詳細な解析による成果が見込まれるため。
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今後の研究の推進方策 |
葉の発達初期にどのようにC4型細胞パターンが形成されるのかを調べるために、pFbSCR1::GUS株、pFbSHR2::GUS株およびpFbDOF1A::GUS株を用いて発現のタイミングの詳細を比較解析する。また、オーキシン輸送を阻害した際のF. bidentisの葉脈パターン形成や、これらの遺伝子発現にどのような影響が現れるか解析する。短期的な人工オーキシン応答性についても解析を進める。 また、FbDOF1Aにrepression domain(SRDX)を連結させて、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター下流で発現させた35S::FbDOF1A-SRDX株およびSRDXを連結しない35S:: FbDOF1A導入株を作成し、維管束形成パターンをと比較解析し、F. bidentisにおけるFbDOF1Aの転写因子としての生理的機能を明らかにする。さらに、FbDOF1Aのプロモーター上に存在するオーキシン応答エレメントと推定される配列に変異をいれたpFbDOF1Amut::GUS株を作成し、発現パターンを解析する。これらの結果から、pFbDOF1Aが、オーキシン下流で働く、ARF転写因子による発現制御を受けるのかどうか明らかにする。また、これら一連の解析とpFbDOF1A::GUS株の発現パターンの詳細な解析から、C4種F. bidentisにおいて、C4型細胞パターン形成がオーキシンの流れによってどのように構築されていくのか明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に研究補助員を雇用できなかったため、その額分、最終年度に次年度使用額が生じた。使用計画としては、研究補助員を1名雇用して研究を遂行する。
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