研究課題/領域番号 |
21K05527
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
藤田 大輔 佐賀大学, 農学部, 准教授 (80721274)
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研究分担者 |
真田 幸代 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物防疫研究部門, グループ長 (80533140)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イネ / トビイロウンカ / 抵抗性遺伝子 |
研究実績の概要 |
広域抵抗性を示す品種Rathu Heenatiの遺伝要因に関しては、部分的にしか明らかにされておらず、広域抵抗性に関わる各遺伝子座の効果やその原因に関しては不明瞭である。そのため、トビイロウンカ広域抵抗性を保有するRathu Heenatiの遺伝的機構・抵抗性機構を解明することを目的とする。本研究では、研究期間内に、以下の3つに関して明らかにする。(1)トビイロウンカ広域抵抗性品種が保有する遺伝要因の解明。(2)加害性の異なるトビイロウンカにより、各抵抗性遺伝子座の効果を検証。(3) トランスクリプトーム解析による各抵抗性遺伝子の抵抗性機構の推定を行っている。 (1)としてBC1F2集団の抗生作用検定を行ったところ、近年飛来してきたトビイロウンカに対して、ほぼすべての系統が強度抵抗性を示した。Rathu HeenatiがBPH3とBPH17以外の複数の強度抵抗性遺伝子を保有する可能性が示唆された。そのため、さらに遺伝因子を分離させたBC2F1集団の作出を進めた。(2)として、T65とRathu Heenatiを交雑したBC1F1集団を移植し、T65を戻し交雑しBC2F1集団を作出した。BC1F2集団において集団幼苗検定を行ったところ、BPH3とBPH17を保有しない集団において抵抗性が見られた。これらの集団は新規トビイロウンカ抵抗性遺伝子が分離していると考えられた。また、異なる加害性を保有するトビイロウンカを用いて、抵抗性評価を行ったところ、BPH17-NILは加害力の強いトビイロウンカに対して抵抗性を示した。(3)BPH3-NILとBPH17-NILに関して、抗生作用と抗寄生性、耐性に関して評価した結果、これらの遺伝子は3つの評価指標に関して、感受性品種よりも強度な抵抗性を保有することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は以下の3小課題で構成されており、「おおむね順調に進展している。」とした理由は以下の通りである。 (1)として、BC1F2集団を用いてQTL解析を行う予定であったが、感受性個体の分離しなかったため、BC2F1集団の作出を進め抵抗性供与親由来の遺伝子座を分割する集団を作出する必要があった。BC1F2集団の抵抗性の評価は予定通り進めることができたが、QTL解析を行っても新規抵抗性遺伝子が特定できないことが推定された。そのため、迅速に異なる解析集団の作出を進めている。 (2)として、NILの作出に向けた戻し交雑を実施しBC2F1集団を作出した。かつ、新規抵抗性遺伝子座を保有する分離集団をBC1F2集団の抵抗性評価により選抜した。計画通りに交雑を進めるだけでなく、新規抵抗性遺伝子が分離する集団を見つけ、BPH3とBPH17以外の遺伝子が存在することを明らかにした。 (3)として、抵抗性機構を推定するための評価を予定通り実施した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)としては、大きな集団サイズでBC1F3集団の作出を進め、BC1F4集団を作出する。また、BC2F1集団を自殖しBC2F2集団を作出し、解析可能な集団であるか検討する。加害力が増加したトビイロウンカ集団があり、それらのトビイロウンカを用いて、新規抵抗性遺伝子の解析に最適な評価方法を検証する。(2)として、新規抵抗性遺伝子を保有するBC2F1集団にT65を戻し交雑し、BC3F1個体を作出する。また、BC1F2集団もしくは、BC1F3集団を用いて新規抵抗性遺伝子の染色体座乗位置を特定する。具体的には、BC1F2に対しては、抗生作用検定を行い、BC1F3集団を用いて集団幼苗検定を実施する。BC1F2集団の遺伝子型を解析した後、QTL解析により遺伝子座を特定する。その後、BC3F1個体の中から、新規抵抗性遺伝子を保有するNIL候補の選抜する。(3)に関しては、遺伝子発現レベルでの抵抗性機構を解明するために、RNAシークエンシングを行い、BPH3やBPH17に関連する遺伝子を特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分離集団の遺伝子型調査を予定していたが、抵抗性評価結果により計画の変更が生じ、遺伝子型調査に使用する金額が残った。次年度において、遺伝子型調査を実施する際に使用する計画である。
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