研究課題/領域番号 |
21K05528
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
岩崎 行玄 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (20193732)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 3量体Gタンパク質 / 器官形成 / イネ / プロテオミクス / 種子 / 免疫沈降 |
研究実績の概要 |
イネ3量体Gタンパク質複合体のコアサブユニットは、Gα、Gβ、Gγ1からGγ5まで、7つのサブユニットからなる。本研究に先立ち、これら全てのサブウニットに対して、抗体調製し、全生活環の蓄積プロファイルを明らかにした。 サブユニットに対する抗体は非特異的な反応産物も認識するので、注意深く研究を進めている。野生型Gγ3タンパク質(野生型Gγ3)は、花に特異的に蓄積していた。Gγ3ヌル変異体タンパク質(Gγ3ヌル)は、野生型Gγ3が示す場所に抗体との反応産物がないので、野生型Gγ3が示す抗体の反応産物は確かにGγ3で良いことを確認した。一方、Gγ3ΔCis変異体タンパク質(Gγ3ΔCis)は、相対的に、大量に蓄積していることを見出した。 本年度は全サブユニットの定量を目指している。現在までの実験技術では、野生型の花は、Gα、Gβに対して、Gγの量が少ない。つまり、野生型の花は、Gβγの形成が不十分で、Gαがβγの抑制を受けないことにより、Gαの一部が、活性を示す可能性が示された。Gγ3ヌル変異体では、Gγ3が欠失しているので、βγダイマーが形成できず、βγの抑制を受けないGαがさらに増え、Gαの働きによる種子形の増大が考えられた。Gγ3ΔCisはGα、Gβに匹敵する量が蓄積しており、GαはGγ3ΔCisに起因するβγダイマーで完全に抑制されている可能性が示された。d1変異体は、Gαサブユニット遺伝子が欠失することにより、短粒を結実する。一方、Gγ3ΔCis変異体は、タンパク質レベルで、Gγ3ΔCisに起因するβγダイマーがGαの機能を抑制することで短粒を結実すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複合体を構成する7種類のコアサブユニットの抗体が、将来的な研究に使用できることが明らかにできた。 全生活環のコアサブユニットの蓄積プロファイルを解析し、全サブユニトの定量実験も軌道に乗った。 申請時に想定した仮説の検証の準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
2021年の成果により、Gγ3ΔCis変異体は、タンパク質レベルでGγ3ΔCisに起因するβγダイマーがGαの機能を抑制することで、短粒を結実すると考えられた。 この考察を実証するためには、抗Gα抗体を用いて、Gαサブユニットに、GβやGγ3ΔCisが、結合していることを示すことが必須であろう。そこで、野生型、Gγ3ΔCis変異体、Gγ3ヌルの3種類の変異体の花組織から、それぞれ、細胞膜を調製し、最適の界面活性剤で可溶化後、抗Gα抗体で免疫沈降実験を行い、共沈産物の解析する手順を計画している。仮説が正しければ、 ・Gγ3Δcis変異体では、大量に蓄積したGγ3Δcisが、Gβとともに、Gαと共沈する。 ・野生型では、わずかな量のGγ3が、GβとともにGαと共沈する。 ・Gγ3ヌルでは、Gαが単独で回収されると考えられる。
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