研究課題/領域番号 |
21K05528
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
岩崎 行玄 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (20193732)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 3量体Gタンパク質 / 器官形成 / イネ / プロテオミクス / 種子 / 免疫沈降 |
研究実績の概要 |
花組織に着目し、イネ3量体Gタンパク質複合体を構成する7種類のコアサブユニットを定量した。定量結果は、WBで得られたngを、分子量で除することにより、molで表記した。 植物材料は、T65(野生型)、GS3(Gγ3ヌル変異体)、Mi(Gγ3ΔCis変異体)、およびd1(Gαヌル変異体)を用いた。組織は、花に着目した。上記4種類のイネより、おのおの粗ミクロソーム画分を調製後、水性2層分配法により細胞膜画分を調製した。実験スケールは、将来、免疫沈降実験を視野に入れ、毎回、細胞膜300μgタンパク質を出発とした。 Gαサブユニットは、T65、GS3、Mi、それぞれ、17、15、15 pmolであった。Gβサブユニットは、T65、GS3、Mi、d1の細胞膜300μgタンパク質当たり、それぞれ、96、83、83、64 pmolであった。Gγ1サブユニットは、T65、GS3、Mi、d1で、8、9、7、14 pmolであった。Gγ2サブユニットは、T65、GS3、Mi、d1で、1、1、1、1 pmolであった。Gγ3サブユニットは、T65、GS3、Mi、d1で、7、0(ヌル)、32、7 pmolであった。Gγ4サブユニットとGγ5サブユニットは、検出限界以下であった。 この定量実験により、下記の点が明らかになった。Gβサブユニットは、T65、GS3、Miにおいて、Gαサブユニットより、およそ5倍多く存在する。次に、Gγ1~Gγ5の総和が、T65、GS3、Mi、d1で、およそ、17、10、40、21 pmolになるので、この値をGαサブユニット量と比べてみると、野生型はGα(1):Gβ(1):Gγs(1)の3量体、GS3はβγが少ないことによる単独のGαの存在、Miは過剰のβγによるGαの不活性化が推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
T65(野生型)の花では、Gα、Gβ、Gγがおよそ1:1:1で、3量体を形成していると考えられた。GS3 (Gγ3ヌル変異体)では、Gγ3が欠失しているので、βγダイマーの量が減少し、βγの抑制を受けないGαが増え、制御を受けないGαの働きによる種子形の増大が考えられた。Mi(Gγ3ΔCis)はGαよりはるかに多い変異型Gγ3が蓄積しており、Gαは、Gγ3ΔCisに起因するβγダイマーで完全に抑制されている可能性が示された。以上の結果、d1変異体は、Gαサブユニット遺伝子が欠失することにより、短粒を結実する。一方、Gγ3ΔCis変異体は、タンパク質レベルで、Gγ3ΔCis過剰に起因する過剰のβγダイマーがGαの機能を抑制することで短粒を結実する仮説を支持する結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年の成果により、Gγ3ΔCis変異体は、タンパク質レベルでGγ3ΔCisに起因するβγダイマーがGαの機能を抑制することで、短粒を結実すると考えられた。 この考察を実証するために、最終年度は、免疫沈降実験を行う。抗Gα抗体を用いて、Gαサブユニットに、GβやGγ3ΔCisが、結合していることを示すことが重要であろう。野生型、Gγ3ΔCis変異体、Gγ3ヌル変異体の3種類の花組織から、それぞれ、細胞膜を調製し、最適の界面活性剤で可溶化後、抗Gα抗体で免疫沈降実験を行い、免疫沈降産物を解析する。仮説が正しければ、Gγ3ΔCis変異体では、大量に蓄積したGγ3ΔCisΔcisが、Gβとともに、Gαと共沈する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で、出張を控えたため 未使用額は次年度の消耗品費に使用
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