日本晴×KHAO NOKの組換え自殖後代(以下、NK-RILs)188系統について、GRAS-Di法による網羅的遺伝子型多型調査を行った。8500以上のGRAS-Diマーカーがマップでき、95%のマーカー区間距離は200kb以下の高密度な遺伝子型情報が入手できた。最も大きなマーカー区間でも2Mbp以下(遺伝距離で20cM前後)であり、ゲノム全域に渡ってQTLスキャンが可能な遺伝子型情報であることがわかった。 NK-RILsを用いて低栄養(1/40倍の吉田の水耕液)および無栄養(蒸留水)で水耕栽培し、草丈や根長、乾燥重(地上部と地下部)を計測し、上述の網羅的遺伝子型情報を用いたQTL解析を行った。どの形質についても、低栄養と無栄養で共通して検出されるQTLsの他に低栄養特異的および無栄養特異的なQTLsが検出された。この結果は、2022年度に親品種間の無栄養~低栄養水耕栽培で確認されたKHAO NOKの栄養ストレス強度応答的な乾物重の変化を説明できる結果であった。KHAO NOKは低栄養で日本晴よりも2倍前後も乾物重が大きいが、この大きな品種間差は主要な単一QTLで説明できるのではなく、同程度の効果を持つ複数のQTLsの集積による結果になった。現在、検出されたQTLsの単離に向けて、栄養ストレス水耕栽培の反復実験とICP-MSによる多元素分析を進めている。 深層学習を利用した形質分類の準備では、染色体置換領域のみ穂形質が分離するIL-F2以降の交雑後代集団を用いた畳み込みニューラルネットワークを進めており、その内容を発展させる研究が令和6年度からの基盤C研究(24K08851)に採択された。
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