研究課題/領域番号 |
21K05531
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
牛島 智一 摂南大学, 農学部, 講師 (50815058)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 転写開始点制御 / 光応答 / 細胞質局在型アイソフォーム / イネ |
研究実績の概要 |
我々は、植物の主要な光受容体であるフィトクロムが、シロイヌナズナにおいて2,000を超える遺伝子に直接働きかけ、それらの転写開始点を変化させることで、mRNAの5’末端の長さを制御し、その結果、およそ400ものタンパク質の細胞内局在が光依存的に変化することを発見した (Ushijima et al., Cell, 2017)。これらの標的はいずれも、これまで特定の細胞内小器官にしか局在しないと考えられていたタンパク質であるが、当該制御によりN末端のシグナル配列が失われることで、機能未知の細胞質局在型アイソフォームが出現し、それらが様々な光環境への植物の適応に働くことを明らかにした。 そこで本研究では、イネにおいて、光依存的な転写開始点制御によって生じる細胞質局在型アイソフォームの過剰発現体や欠損変異体を作成し、細胞質局在型アイソフォームの機能を明らかにすることを目的としている。また、得られた過剰発現体や欠損変異体の形質について解析し、当該遺伝子の育種素材としての評価を行う。 当該年度では、光依存的な転写開始点変化によって、コードするタンパク質のN末端のアミノ酸配列が変化することが明らかとなったイネの遺伝子について短い転写産物由来のcDNAを、形質転換によりイネ標準品種で過剰発現させ、カルスから再生したT0植物の表現型を観察することで、細胞質局在型アイソフォームの機能を網羅的に解析ためのコンストラクションを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多くの標的遺伝子をより簡便に扱うため、in-fusion技術が使えるようにN末端融合用、C末端融合用それぞれについて、ユビキチンプロモーター: GFP遺伝子: Nosターミネーターのカセットを導入したベクターを作成した。カルスでの選抜を薬剤で行うため、ベクターにはハイグロマイシン耐性遺伝子も含むように設計した。上記で作成したベクターを用い、光依存的な転写開始点変化によって、コードするタンパク質のN末端のアミノ酸配列が変化することが明らかとなったイネの遺伝子についてコンストラクションを行った。
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今後の研究の推進方策 |
作成したベクターを用いて形質転換体の作成を行い、導入した細胞質局在型アイソフォームの機能解析を行う。さらに引き続き遺伝子のクローニングを進め、解析対象の遺伝子を網羅した形質転換体プールを作成する。 対象遺伝子の解析のため、欠損変異体のスクリーニングおよび形質評価も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナによる緊急事態宣言の発出により、一部のコンストラクトや変異体の作成が若干数できなかったため。今年度は、未作成のコンストラクションや変異体の同定のために予算を使用する。
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