研究課題
昨年度までに選定した耐倒伏性が異なるトウモロコシ品種について,本年度も茎葉および根系構造を破壊調査および三次元点群再構築技術をもとに解析を行い,構造形質における品種間差異の再現性を確認した.また,茎葉構造の品種間差異が自然風応答に及ぼす影響を評価するため,トウモロコシ地上部に加速度センサを取り付け,受風モーメントを品種間で比較した.その結果,茎葉構造は昨年度と同様に葉数や葉面積には顕著な品種間差は認められなかったものの,耐倒伏性に優れる品種では群落中層に位置する葉の個葉面積が小さく,全葉位で細長い葉身形状を示した.葉身形質の他にも,耐倒伏性品種では茎含水率が2カ年とも有意に低く,これが地上部の自重モーメントを低減する一因と考えられた.地上部構造が異なるこれらの品種の茎部に加速度センサを取り付け,受風モーメントを実測した結果,耐倒伏性品種ではいずれの風速域でも受風モーメントを低く維持する傾向にあった.このことから,耐倒伏性品種の茎葉構造は,強風下における地上部の安定性を高め,倒伏リスクを低減していることが示唆された.また,耐倒伏性品種では,両年次において地下部乾物重は倒伏感受性品種に比べて小さいものの,高い側根乾物分配率と節根の適切な出根角度により高い根系支持力を達成していた.そこで,地上部の倒伏モーメントが根系支持力を上回る倒伏限界風速を推定したところ,耐倒伏性品種では倒伏感受性品種よりも5-7 m/s程度強い風速まで耐えられると見積もられた.以上より,本研究で供試した耐倒伏性品種では,茎葉および根系の構造特性によって倒伏リスクを低減していることが示唆された.このような地上部・地下部構造の最適化が効率的な乾物利用を可能にし,生育期間の短い寒地向けトウモロコシ早生品種の耐倒伏性と収量性を両立するうえで重要であると結論づけられた.
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Crop and Environment
巻: 3 ページ: 25~32
10.1016/j.crope.2023.11.003