研究課題/領域番号 |
21K05544
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
阿部 淳 東海大学, 農学部, 教授 (60221727)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スクミリンゴガイ / 水稲 / 苗の食害 / ジャンボタニシ / 育苗 |
研究実績の概要 |
1)食害が少ない苗づくり イネ苗食害について、育苗時の窒素施肥量、品種、苗の生育段階の影響を調査した。品種は、コシヒカリとヒノヒカリを供試し、窒素施肥については、標準量の区と、標準量の半分の区、窒素肥料を施肥していない区で育苗した。稚苗および中苗を、黒ぼく土を厚さ5cmに敷いたコンテナに10株(各株2個体)ずつ移植し、スクミリンゴガイ10頭を投入した。稚苗においては、コシヒカリがヒノヒカリよりも食害にあいやすく、また、窒素を施肥しない区に比べて、標準またはその半量の窒素を施肥した区では、食害が早く進行した。中苗では、稚苗に比べて食害が軽微であった。 2)スクミリンゴガイの越冬状況 2022年1月下旬に、熊本県内の水田でコドラート法により、土壌の深さ別のスクミリンゴガイの個体数と土壌硬度を調査した。菊池市では、黒ぼく土の不耕起水田の水口と中央、耕起済水田の合計3カ所を調査した。不耕起の水口では深さ0~5㎝(土壌硬度は約10㎜)に生きている個体が多く、不耕起の中央では深さ0~1㎝(土壌硬度19.3㎜)でわずかな個体が確認できたのみであった。耕起済では2~5㎝(土壌硬度6.6mm)に生きている個体が一番多く確認できた。八代市の水田は沖積土壌であり、調査した場所は冬の耕起前の水田を2カ所と水田の明渠である。いずれも水田内は土壌表面近くに死んだ個体が見られたのみで、多くの個体が明渠に集まっていた。イネの収穫後は耕起せず、スクミリンゴガイを明渠に集めて駆除するのが効果的と考えられた。 3)電気への反応 水槽に赤玉土を敷き水深5㎝にスクミリンゴガイ20頭を投入し、そこへ銅板を2枚電極として15cmの間隔をあけて差し込み12Vのバッテリーを繋いだ。電流を流す前には活発に移動していたが、電流を流してからは移動しなくなり、さらに電流を停止した後も、24時間にわたりほとんど移動が見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に掲げた4つの目標 ①スクミリンゴガイの食害を受けにくいイネ苗の育苗法、②「ジャンボタニシ除草」の効果を上げるために求められる代かきの精度、③スクミリンゴガイの過剰な増殖を抑制するための冬期の水田管理、④スクミリンゴガイが食べない外来雑草の同定とその原因物質、のうち、初年度で、①については、施肥・品種・苗齢との関係を明らかにし、③については耕起せずにおくことや明渠の管理が重要であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
申請時に掲げた4つの目標のうち、①スクミリンゴガイの食害を受けにくいイネ苗の育苗法について前年度の追試験を行うとともに、②「ジャンボタニシ除草」の効果を上げるために求められる代かきの精度、④スクミリンゴガイが食べない外来雑草の同定とその原因物質、について、熊本県内の稲作農家の協力を得ながら調査を進めていく。
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