研究課題/領域番号 |
21K05549
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
羽方 誠 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 上級研究員 (80450336)
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研究分担者 |
中野 洋 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, グループ長補佐 (10414814)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高温不稔 / 水稲 / 葯 / 気孔 |
研究実績の概要 |
本研究は、前科研費採択課題「気孔応答に着目したオミクス解析による高温不稔メカニズムの解明」の研究結果から、葯に存在する気孔の数と高温不稔耐性には非常に高い正の相関があることが判明した。そして、その考察から葯気孔は、①蒸散により葯自身を冷却し高温から花粉を防御する機能と②葯を脱水し開裂・花粉飛散を促進する機能の2つの重要な役割を果たしているとの仮説を構築した。本研究では、仮説を検証することにより葯気孔の生理的機能と、高温不稔耐性に及ぼす影響を明らかにする。 これまで調査した19品種に新たに8品種追加し、気孔数、気孔密度、気孔の形状、花粉数について調査を行った。その結果、気孔数および気孔密度に対して高温不稔耐性との間に明確な相関があることが確認出来た。 葯気孔による葯の冷却効果を調べるため、人工気象室内に作成した水稲高温不稔検定システムの人工水田上において、超近接撮影が可能な赤外線サーモグラフィーを使用して、高温処理中の開花状態の葯表面を撮影し、葯温度の品種間差の解析を試みた。その結果、葯気孔数の多い品種と葯気孔数の少ない品種には葯周辺の明確な温度差が認められた。しかしながら、赤外線サーモグラフィーの温度検出範囲には、葯と一緒に穎表面も含むため、葯のみを安定的に撮影することは困難であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、8品種追加して、気孔数、気孔密度、気孔の形状、花粉数の調査と、葯気孔による葯の冷却効果の調査を行った。後者では超近接撮影が可能な赤外線サーモグラフィーを使用して、高温処理中の開花状態の葯周辺を撮影後、葯周辺の温度の品種間差を解析したところ、葯気孔数の多い品種と葯気孔数の少ない品種には明確な温度差が認められた。しかし、赤外線サーモグラフィーの温度検出範囲には、葯と一緒に穎表面も含むため、葯のみを安定的に撮影することは困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
葯の温度計測は困難であったが、籾の温度計測は可能であることが分かった。蒸散による籾の冷却効果を、葯温度の計測に用いた超近接撮影が可能な赤外線サーモグラフィーを使用して、高温処理中の出穂前から出穂直後、開花時の籾表面を撮影し、籾温度の品種間差を解析する。 蒸散による葯の冷却により、花粉の温度上昇が抑制され、花粉能力は維持されるのかどうかを明らかにするために、耐性および感受性品種の高温処理後の花粉の状態をヨウ素デンプン反応により解析する。 また、高温不稔耐性には出穂期の茎NSC量と一穂に付く穎花(籾)の数が影響する可能性がある。高温耐性および感受性品種各3品種について、人工気象室で生育させ、NSCについては出穂期前後のイネから茎を採取し、NSC濃度を測定する。一穂籾数については、出穂後の穂を採取し、穎花数を計測し、耐性の違いと各項目の関係性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品類の購入が当初計画より少なく済んだため。その経費を次年度実施予定のNSC測定に係る消耗品の購入に使用する。
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