研究課題/領域番号 |
21K05552
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
田澤 純子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中日本農業研究センター, 上級研究員 (50355533)
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研究分担者 |
内野 彰 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中日本農業研究センター, グループ長補佐 (20355316)
遠野 雅徳 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 遺伝資源研究センター, 上級研究員 (50547718)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 水稲 / 有機栽培 / 米ぬか散布 / Clostridium属細菌 / 有機酸 / コナギ |
研究実績の概要 |
1)長期間水稲有機栽培を継続している水田土壌を用い、米ぬかを加えて培養する培養実験系で得られた培養液を、4種類のイオン交換カラムの条件を変えて通過させ、コナギ種子の発芽阻害活性を調査した。その結果、強陰イオンカラムを通過した培養液は発芽阻害率が低下したため、抑制物質は酸性物質であることが推測された。 2)1)の培養実験土壌、または実際に水稲栽培中の有機水田圃場で採取した水田土壌を熱処理し、嫌気条件下の平板希釈法で得られたコロニーから複数菌株を単離した。これらの菌を米ぬか懸濁液中で培養し、得られた培養液のコナギ発芽抑制活性を調べたところ、一部の菌で強い発芽阻害を示した。遺伝子解析によりいくつかの単離菌がClostridium属細菌であると同定された。そのうち1株について全ゲノム解析を行った結果、新種のClostridium属細菌であると考えられた。 3)単離したClostridium属細菌を米ぬかと培養し、培養液中の揮発性成分を大容量溶媒注入法によってGC-MSで網羅的に一斉解析した。その結果、ブタノールなどのアルコール類、酢酸、酪酸等の有機酸類、メチルベンズアルデヒドなどが検出された。メチルベンズアルデヒドは3種類の異性体の中からo-トルアルデヒドであることを確認し、その発芽抑制活性濃度を標品で評価したところ、0.4mMでコナギ種子の発芽を完全に阻害した。しかし、培養液中の濃度はその濃度に達していなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R3年度は発芽阻害物質の探索と土壌微生物の単離・同定を行う計画となっていたが、米ぬかとの培養液がコナギ発芽阻害効果を示すClostridium属細菌が単離されたこと、そのうちの1種が新種であることが判明したこと、並びにコナギ発芽抑制に関与する物質の推定が進んでいることから、概ね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
R3年度に引き続き発芽阻害物質候補の絞り込みを進めるとともに、単離したClostridium属細菌の特性解明を進める。R4年度からは圃場試験も開始して、土壌溶液や田面水中の成分を分析するとともに、土壌微生物相についてもアンプリコンシーケンス解析を進める。土壌溶液や田面水中の成分は有機酸類を中心に、GC-MSやHPLCなどを用いて分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品類が当初計画より安価に購入できたため、次年度使用額が生じた。次年度に室内実験資材費として使用する。
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