研究課題/領域番号 |
21K05556
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
田中 紀充 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (40559259)
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研究分担者 |
小森 貞男 岩手大学, 農学部, 教授 (00333758)
渡邉 学 岩手大学, 農学部, 助教 (00361048)
大城 克明 富山県農林水産総合技術センター, 富山県農林水産総合技術センター園芸研究所果樹研究センター, 副主幹研究員 (20523103)
小林 達 地方独立行政法人青森県産業技術センター, 農林部門, 研究員 (50700366)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リンゴ / 果実成長 / 変形果 / 温暖化対策 |
研究実績の概要 |
・リンゴの開花前後からの袋かけによる温度上昇の効果は特にみられなかったが、遮光2重袋を用いた場合の果実成長は顕著に抑制されており、日射量が果実成長に大きく貢献している可能性が示唆された。気温の上昇については日平均気温の上昇よりも日中の最高気温の上昇が果実成長に影響を及ぼしていることが推察され、満開後の晴天が続き、気温上昇することで果実成長の横径が成長し、変形果実の発生が多くなる傾向があると推察された。 ・リンゴの栽培されている数品種で種子と果実重・果形の関係を調査したところ、果実成長の細胞分裂には品種間差があった。果実の果肉部分の細胞分裂に部位による違いがみられ、これも品種間で違いがみられた。 ・‘ふじ’において、完全種子と不完全種子の植物ホルモン量を定量したところ、満開後3週または5週から7週にかけて不完全種子では植物ホルモン合成能力の停滞または低下が示唆された。これらの結果により、完全種子と不完全種子の植物ホルモン量を合成可能な期間が種子および果肉の植物ホルモン量の分布に偏りができることが果実肥大に影響することが推察された。 ・満開後11~20 日の平均気温が果実成長に影響しており、特に気温が高いと横径の成長が顕著にみられた。鉢植えの温度処理の果実成長をみたところ、露地で調査していた結果とほぼ同様の結果が得られた。 ・発芽期から結実後まで高温に遭遇すると、幼果の変形果率は高くなる傾向が見られた。果実変形について、その特徴と発現頻度について調査した。また、秋~冬期の気温は花芽形成の速度に影響し、高い気温で促進、低い気温で遅延することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[田中]リンゴの開花直後からの袋掛けは顕著に果実成長を低下させた。また、開花後の果実への遮光2重袋を用いた果実成長は著しく悪くなったことから、果実成長には温度も重要ながら日射量が大きく影響することが示唆された。 [小森] (1) ‘ふじ’等の果実肥大モデルはほぼ作成できた。(2) 果実細胞の形状が部位別に変化する過程は既に把握しており、果実変形の原因解明に着手している。(3) 果実肥大に及ぼす種子の影響について統計解析中である。 [渡邉] ‘ふじ’の幼果期における果肉および種子の植物ホルモン動態を明らかにすることができた。 [小林]リンゴの細胞分裂期間は気温が高いほど短くなり、結果的に細胞数が少なくなる傾向が本研究の幼果への加温実験で確認され、露地での調査結果と一致していた。 [大城] 開花前後の温度と幼果時の果形との関係、秋~冬期の気温と花芽形成の速度との関係においては、変形果の発生に関与すると考えられる知見が得られた。秋~冬期の気温と果実肥大との関係については次年度も確認を行う。
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今後の研究の推進方策 |
[田中]リンゴの果実成長についての基礎的な知見について、花芽、温度、日射量について解析を進めていく。 [小森] (1) ‘ふじ’と‘黄香’の果実肥大モデルについて論文を作成し投稿する。(2) ‘ふじ’の果実細胞の経時的な形状変化に関する論文を作成し投稿する。(3) 果実肥大に及ぼす種子の影響について解析終了後に論文を作成する。 [渡邉] ‘ふじ’について、種子の入り方と果肉の植物ホルモン分布の関係を解明する。 [小林]リンゴの露地栽培と気象室内のポット樹を用いて開花後の気温と細胞分裂期間およびその長さについて今後も調査を進める。 [舟橋] 開花前後の温度が幼果および収穫果実に及ぼす影響、秋~冬期の気温と花芽形成および次年の果実肥大に及ぼす影響の調査、開花前後や秋~冬期の気温を低下させる細霧冷房技術の有効性を検証する。
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