研究課題/領域番号 |
21K05557
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西山 学 東北大学, 農学研究科, 助教 (80312627)
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研究分担者 |
金山 喜則 東北大学, 農学研究科, 教授 (10233868)
堀 雅敏 東北大学, 農学研究科, 教授 (70372307)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | LED / 青色光 / 長日植物 / 花芽形成 / 害虫防除 |
研究実績の概要 |
慣行の切り花類の栽培では,開花調節は白熱電球によって行われていたが,白熱電球は寿命が短く,電気エネルギーの光エネルギーへの変換効率が低いことから,代替として長寿命で省電力の発光ダイオード(LED)を光源とする栽培が普及しつつある.しかし,白熱電球が幅広い波長の光を放射するのに対して,LEDは単色光を放射することから,代替することにより白熱電球で栽培した場合と異なる開花反応を示すことが予想される.また,白熱電球による開花調節の原理としては,フィトクロムに基づく赤色光と遠赤色光が制御要因であるとされている.一方,青色光も花成制御に関わっており,長日植物のモデル植物であるシロイヌナズナでは開花が促進されることが知られているが,LEDが普及するまでは栽培用に簡易に利用できる青色光の光源がなかったことから,開花調節に利用されてこなかった.そこで本課題ではまず,青色LEDによる開花調節に焦点を当てる. さらに,害虫防除は一般には農薬散布によって行われ,また,光の殺虫効果は波長が短いほど強く、紫外線BやCのように波長が短い紫外線だけにあるとされてきた.しかし最近,従来の常識に反して、可視光である青色光に種々の昆虫に対する致死効果が発見されたため,青色光による害虫防除を着想した.以上により,青色光による開花の制御機構を解明するとともに殺虫効果を検証し,青色LEDによって開花と害虫を同時に制御する全く新しい栽培体系を開発することを目的とする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物の開花に及ぼす青色光の影響の調査には,エラータム系とシネンシス系のデルフィニウムを供試した.人工光利用型ファイトトロン(22℃/18℃)で栽培し,8:00~16:00はメタルハライドランプを照射して栽培し,その後16:00~4:00は夜間電照を想定し,青色(B),赤色(R),遠赤色(FR)の各LEDを照射した.対照としてLEDの照射を行わない短日区を設けた.エラータム系の花成は,R区とFR区と比較してB区で遅い傾向が認められた.一方,シネンシス系の花成はB区でR区,FR区と同等に促進された.切り花品質については,いずれの系統もB区で小花数が多い傾向が認められた.以上から,シネンシス系デルフィニウムの花成促進に青色光が効果的であることが明らかとなった. ハスモンヨトウの孵化幼虫を対象に青色光の殺虫効果を調査した.予備試験の結果,人工飼料を与えた状態で青色光を照射した場合,照射によって餌が変質し,幼虫による摂食が低下することが明らかとなった.各種検討を重ねた結果,7時間給餌-17時間絶食を4日間繰り返しても,幼虫は成育可能であることが示された.そこで,孵化幼虫を用いて,全暗下での7時間給餌-青色光照射下での17時間絶食を4日間繰り返し,死亡率を調査した.その結果,給餌,絶食ともに全暗下とした幼虫の死亡率は0%であったのに対して,10×1018 photons・m-2・s-1で青色光を照射した幼虫の死亡率は417 nmで92%,465 nmで58%であった.以上から,青色光はハスモンヨトウの幼虫に対して殺虫効果があることが明らかになった.
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今後の研究の推進方策 |
デルフィニウム以外の長日植物における青色光の開花促進効果についても調査を行う.また,シネンシス系デルフィニウムにおけるハスモンヨトウの食害や青色光の殺虫効果について明らかにする. また,ハスモンヨトウの孵化幼虫に対する青色光の効果的波長および有効光強度を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度の植物の栽培や調査に関しては,研究室で所有している設備で対応できた.旅費は,学会参加に使用する予定であったが,オンライン開催となったため使用しなかった.害虫防除に関しては,2022年度分と合わせて設備を購入する予定である.
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