研究課題/領域番号 |
21K05558
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
山根 健治 宇都宮大学, 農学部, 教授 (60240066)
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研究分担者 |
黒倉 健 宇都宮大学, 農学部, 講師 (10650898)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | RNA-seq / システインプロテアーゼ / ポリガラクツロナーゼ / NAC転写因子 |
研究実績の概要 |
Ornithogalum thyrsoidesは球根類の観賞作物であり,その小花はエチレン感受性が低い.本研究ではO. thyrsoides花被の遺伝子発現をトランスクリプトーム (RNA-seq) 解析し,花の老化の分子メカニズムを明らかにすることを目的とした.植物は秋田県立大学の温室において栽培し,収穫後の切り花を宇都宮大学に乾式輸送した.切り花は相対湿度 60%,気温20~21℃,白色蛍光灯の24時間日長下に置いた.O. thyrsoidesは花序の基部から先端にかけて順番に開花し,小花は1週間ほどでしおれ始め,10日ほどで完全にしおれた.花被を満開 (FB),早期老化 (ES),完全老化 (CS)の 3ステージでサンプリングし,RNA-seq解析を行った.FB vs ES および FB vs CS の比較により,それぞれ 578 および 1,173 の差次的に発現する遺伝子 (DEG) が特定された.ES対CSで有意なDEGは検出されなかった.遺伝子オントロジー (GO) 解析によりポリガラクツロナーゼ活性に関連する GO 用語が FB よりも CS で有意にエンリッチされ,膜貫通輸送および光化学系 IとII が ES および CS と比較して FB でより豊富であった.老化に強く関連するプロテアーゼであることが知られている老化特異的システインプロテアーゼSAG39,チオールプロテアーゼSEN102,およびメタカスパーゼ-9の転写産物(TPM)は,FBと比較してESおよびCSで有意に増加した.NAC100,NAC021,ONAC010,NAC002および NAC048 等の NAC 転写因子遺伝子の発現は老化期に増加したことから,これらの転写因子が花被片の老化に関与していることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度および4年度に実施した研究により,グラジオラスおよびO. thyrsoidesにおいて,老化期に特異的に発現するNAC転写因子およびWRKY転写因子が明らかとなった. また、ポリガラクツロナーゼ等の細胞壁の分解に関係する遺伝子群や,タンパク質の分解に関与するプロテアーゼの遺伝子群が2種に共通して老化期に増加していることが確認された. 以上のことから本研究課題は「おおむね順調にしている」と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今回O. thyrsoidesの老化に関連することが示唆されたNAC100,NAC021,ONAC010,NAC002および NAC048 などの転写因子について塩基配列をアラインメント解析し,それぞれの機能について検討する. グラジオラスにおいて老化特異的に発現するNAC転写因子やWRKY転写因子についてもO. thyrsoidesにおいて見いだされた転写因子との比較を行い,共通して老化に関わる転写因子遺伝子について調査する. グラジオラスについて生育期の環境ストレスや植物の生育を調整する物質の処理が切り花の品質,小花の老化および老化に関わる候補遺伝子の発現に及ぼす影響について調査する.
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の使用について,予想よりも費用が低く抑えられたため,次年度に繰り越しさせて頂きました.
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