研究課題/領域番号 |
21K05559
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
國分 尚 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 准教授 (20282452)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アントシアニン / 花色変化 / 液胞pH |
研究実績の概要 |
2021年度は主としてクサキョウチクトウ品種の花冠色素のpHによる色彩変化の研究を行なった。アントシアニン水溶液は吸収極大波長が概ね560nmよりも長い(数字が大きい)と肉眼では青く見え、短い(数字が小さい)と赤く見える。 青色品種のジェフズブルーのpH4~7.5の吸収極大波長は542~584nm、赤色品種のウォーターメロンパンチでは、510~556nmであった。どのpHの時でも、同じpHだと、ジェフズブルーの吸収極大波長はウォーターメロンパンチのそれより長かった。これより、吸収極大波長の取り得る範囲について、赤色品種は、pHが上下しても同じpHの青色品種より短い波長しか吸収できず、同じpHで比較すると青色品種の色素は赤色品種よりも青いことが判明した。 また、青色品種と赤色品種の吸収極大波長の範囲には、重なっている部分(542~556nm)がある。この範囲の時、青色品種と赤色品種は同じ色を呈するが、肉眼で青く見える範囲には含まれない。さらに、7月から9月にかけて、3時間ごとに花弁をサンプリングして、pHを計測する実験を行ったところ、pHの取り得た範囲は、ジェフズブルーだと5.85から6.22、ウォーターメロンパンチで5.19から5.62だった. 結論として、青色品種は青い色素を合成するが、pHが赤紫色を示す範囲まで一時的に下がることで可逆的花色変化が起きるのに対し、赤色品種は色素が元々赤いことと、pHの変化が青紫色を示す範囲に届かないために変化しないと推察した。 また、花色変化が概日リズムによるものではないことを示すための実験を行なった。24時間暗期で花色が変化しないことは確認済みであるが、さらに確実にするため2021年度には24時間明期の実験を行なったが、人工気象機のトラブルにより信頼性のあるデータは得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クサキョウチクトウの可逆的花色変化の原因が液胞pHの変化によるアントシアニンの吸収極大波長の変化であることを予想していたが、その裏付けとなるデータを得ることができたため。今後は品種を増やして追試験を行い、この理論が正しいことを確実にしていく。
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今後の研究の推進方策 |
花色変化の原因がpHの変化であることが判明したため、水素イオントランスポーターなどの液胞pHに関与する遺伝子をクローニングし、その発現を青色品種と赤色品種間、青色品種の青色になる環境と赤色になる環境間で比較することにより、花色変化の生理的機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画書で予算請求したロータリーエバポレーターについて仕様の決定が遅れ、年度内に発注できなかったため。2022年度の早期に発注し、執行する予定である。
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