本年度は主にバラの茎流速度を明らかにするため,茎熱収支法による計測を行った.茎流速度(蒸散流速度)は,茎の一点を加温してその上下の温度を計測する茎熱収支法で求めることができる。本試験では、同時に多検体を測定することを目指し、桜谷(1991)の方法に従い茎流センサーの自作を試みた.また,市販の茎流センサーとしてAgrishot社のFilm Sap Flow Sensorを用いた.茎流センサーは温室で栽培管理しているバラの主茎に取り付け計測を開始し.自作の茎流センサーを用いた茎流速度の測定は可能であったが,安定したデータをとるまでには至っていない.使用する電熱線の太さや電圧などを細かく調整する必要もあり,今後さらに詳細に検討することにしている.市販の茎流センサーは,センサー部の取り付けを慎重に行う必要があるものの,自作センサーに比べ安定的にデータを得ることができた.これにより,より詳細で正確な茎流速度を求めることが可能となった. 研究期間全体を通して,バラ切り花の花柄部における水の流れは明期に入ると急激に増加し,暗期に入ると抑えられることが明らかとなり,光照射による著しい花弁成長の前に花器官への水の流入が示唆された.また,バラ切り花の問題としては日持ち性が短いことが挙げられるが,水に対して放電処理を行うことによって得られたNO3-が日持ち性に及ぼす影響について市販鮮度保持剤との比較試験を行った.その結果,市販剤は対照区より5日程度長く日持ちし,硝酸添加水も4日長く日持ちすることが明らかとなった.
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