研究課題/領域番号 |
21K05567
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
福岡 信之 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (30502637)
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研究分担者 |
濱田 達朗 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (50310496)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Heat stress / Internal browning / Lipid peroxidation / Lipoxygenase / Radish / Reactive oxygen species / Root biomass / Unsaturated fatty acid |
研究実績の概要 |
本研究では、高温ストレス下で起こるダイコンの内部褐変症と生体メイラード反応や酸化ストレス反応の関係をみる2種の実験を実施した。 実験Ⅰでは、高温ストレスによって起こる本障害の発生機構を明らかにするため、圃場に低温区、中温区、高温区を設けてダイコンを栽培した。その結果、温度が高い区ほど障害が多発し、褐変誘導に関連する物質や活性酸素種に関連する物質の含量や酵素活性が高かった。その一方で、メイラード反応に関係する還元糖濃度に処理区間差はみられなかった。また、温度が高い区ほどマロンジアルデヒドやアクロレインなどの脂質の過酸化過程で生ずるカルボニル化合物の集積度が高く、最終糖化産物の集積度も高かった。メイラード反応以外のROS産生の場として、NADPH依存性ROSバーストやミトコンドリア電子伝達系に関連する遺伝子の発現解析を行ったが、温度が高い区ではPTI-ROSバースト関連遺伝子が上方制御されていた。 実験Ⅱでは、高温遭遇時のバイオマスの差が障害の発生におよぼす影響を検討した。その結果、バイオマスが大きい根に限って高温に遭遇すると、障害が多発し、代謝産物などの動向も実験Ⅰと同様の傾向を示した。さらに、バイオマスが大きい根では高温によって、リポキシゲナーゼ(LOX)やリパーゼなどの遺伝子の発現が上方制御されていた。 これら一連の結果は、高温ストレス下ではNADPH依存性ROSバーストの活性化による多量のROS産生とLOX などの脂質分解酵素の活性化が起こり、これらが膜構成脂肪酸の不飽和部位に作用し、膜脂質の過酸化が誘発されることを示唆する。このため、膜崩壊が生じ、酵素的褐変が進行して褐変に至るものと考えられた。なお、メイラード反応由来の最終糖化産物(AGEs)が褐変の主因とした当初の仮説は、膜脂質の過酸化の反応過程で生ずるカルボニル化合物由来のAGEsである可能性が示唆された。
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