東京都府中市(東京農工大学,アロフェン質黒ボク土),宮城県大崎市(東北大学,非アロフェン質黒ボク土),島根県松江市(島根大学,黄赤色土),島根県雲南市(民間圃場,灰色低地土)にあるラビットアイブルーベリーの圃場から土壌を採取し,基本的な化学特性(pH,EC,C/N比他)とリンの存在形態を調査した.調査を行った圃場のラビットアイブルーベリーの成長は良好であり,土壌のpHは4.76~6.00の範囲にあった.全リン含量について,アロフェン質黒ボク土および灰色低地土では地表から30~60㎝,非アロフェン質黒ボク土および黄赤色土では地表から30~60cmの濃度が高かった.また,長期間にわたるラビットアイブルーベリーの栽培は浅い土壌深度における難溶性リン含量を増加させることが明らかになった. 日本に自生するツツジ科植物より単離したエリコイド菌根菌の難溶性リン(リン酸鉄)の分解能を調査し,資化能に優れるEF405株およびEF1895株を調査に供試した.リン源としてリン酸鉄のみを含有する培養土にこれら菌根菌を接種し,レタスを栽培した.EF405接種区のレタスの地上部および地下部の新鮮重は対照区,EF1895接種区よりも有意に重かった.レタス地上部のリン含量は接種区間における有意差が無かったが,培地の可給態リン含量はEF405接種区が他の処理区よりも有意に高かった.これら菌根菌を接種した培養土(ピートモスと鹿沼土を体積比で3:1に混和したもの)でラビットアイブルーベリーを挿し木繁殖したところ,EF405接種区のブルーベリーは他の処理区よりも有意に重いことが明らかになった. 以上の結果は,エリコイド菌根菌を活用したリン低投入型の作物栽培体系の確立を示唆するものである.
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