研究課題/領域番号 |
21K05578
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
高居 恵愛 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (70589770)
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研究分担者 |
及川 彰 山形大学, 農学部, 教授 (50442934)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 環状剥皮 / CE-MSメタボローム解析 / RNA-Seq / アントシアニン生合成関連遺伝子 / ABA代謝関連遺伝子 |
研究実績の概要 |
2021年度では、樹勢の異なる2品種(‘5BB’と‘Hybrid Franc’)の二倍体と四倍体台木に接木した‘ルビーロマン’樹の環状剥皮処理試験で得られた果実サンプルについて、キャピラリー電気泳動質量分析法(CE-MS)を用いて、合計60サンプルのメタボローム解析と、48サンプルのトータルRNAを用いたトランスクリプトーム(RNA-Seq)解析を行った。メタボローム解析の結果については、現在データ分析進行中である。RNA-Seqの結果について、環状剥皮処理による着色促進した果皮サンプルでは、VvMYBA1、VvMYBA2、VvMYBA8等の転写因子と、VvUFGT、いくつかのF3’5’H、VvF3’Hを含む多くの構造遺伝子はアップレギュレートされた。その一方、多くのMyb-related protein等MYB様転写因子、多くのUF3GT(VvUFGT様遺伝子)はダウンレギュレートされた。また、ABA生合成のキー因子であるVvNCED3は、ベレゾーン期では環状剥皮によってアップレギュレートされたが、成熟中後期(満開後60日)ではダウンレギュレートされた。この結果は、果実成熟の中後期に環状剥皮処理区のABA含量の増加と一致しなかった。一方、ABA代謝に関わるVvCYP707A1はベレゾーン期より成熟中後期で発現レベルが減少した。また、ABA-GEから活性型ABAを放出するVvABABG1は成熟中後期で増加した。これらの結果から果実成熟中後期でのABA蓄積の増加はABA分解の減少、もしくは他組織から転入したABA-GE由来する可能性を示唆した。ABA代謝関連遺伝子群とアントシアニン生合成関連遺伝子群の間に負の相関を示した。現在、ほかの植物ホルモンや炭水化合物などの代謝経路の遺伝子発現変動と、これらの変動と生理的パラメーターの変化の間の相関性について解析進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、接木‘ルビーロマン’樹の環状剥皮処理試験で採取したサンプルをメタボローム解析とRNA-Seq解析を予定していた。2021年度では、メタボローム解析について、各種植物ホルモンおよび代謝物の含量をLC-MS法で測定した。また、キャピラリー電気泳動法(CE-MS)によるメタボローム分析も行い、アミノ酸、有機酸、糖リン酸、ヌクレオチド、ポリアミンなどエネルギー代謝に関わる一次代謝物の網羅的測定を行った。また、四種類台木に接木した‘ルビーロマン’の栽培試験と、同じ樹の環状剥皮処理試験で経時的採取した果実(果皮)についてRNA-Seq測定を終わった。現在、この二つ試験のRNA-Seqのデータを解析している。ただし、バイオインフォマテックス手法の初心者のため、データ解析を若干遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、既に完成したCE-MSとRNA-Seqで得たデータの解析を進み、台木品種および環状剥皮処理による異なる成熟表現型での代謝経路の差異を見出す。また、メタボローム解析で得た代謝物の差異とRNA-Seqによる遺伝子発現の差異間の関連性を解析し、代謝経路の差異を引き起こす原因を探索する。さらに、果実成熟開始のスイッチとなる因子を探索するため、ベレゾーン直前に多数の発育ステージの異なる果粒を採取し、メタボロームとトランスクリプトーム解析を行う。また、品種間の比較と、有核・無核栽培法の比較も行い、成熟パターンの品種間差の原因と遺伝特性を解明する。最終目標としては、ブドウ果実成熟開始のトリガーを探索し、また、ブドウ果実着色の制御メカニズムを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度ではRNA-Seq解析にライブラリー調製と次世代シークエンシングの委託費としておよそ500,000円、また、メタボローム解析に200,000円とする。そのほか、消耗品と試薬類100,000円、旅費100,000円を必要とする。
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