研究実績の概要 |
本研究では、ウリ科植物の巻きひげ形成機構を明らかにするため、メロンのCmTCP1転写因子を介した情報伝達機構の解析を行った。令和5年度は、過年度から進めていたメロン巻きひげなし品種‘TLタカミ’(ctl変異株)と野生株の交雑後代(BC1世代)計1,455 個体のファインマッピングを完了し、CmTCP1遺伝子のみがctl変異の原因遺伝子たりえること、すなわちCTL遺伝子との同一性を証明した。続いて、CmTCP1との相互作用候補であるタンパク質リン酸化酵素(PK-Y)について共免疫沈降等の実験を進めたが、相互作用の直接的な証拠が得られなかったため、前年度にin vitroでの相互作用が証明されたYABBY転写因子(CmYAB1)に注力してさらなる解析を行った。同遺伝子の過剰発現コンストラクトをシロイヌナズナに導入した組換え体を作出したところ、コントロール植物体と比較して表現型に特段の差は認められず、葉(ウリ科の巻きひげの元となる器官)の形態形成におけるCmYAB1の関与は不明であった。一方、複数系統のメロン野生株の葉と巻きひげにおける遺伝子発現量をRNA-seq解析により定量したところ、CmYAB1はメロンに存在する7つのYABBYホモログ遺伝子の中で、巻きひげ/葉の発現量の比率が最も高かった。また、分子系統解析においてCmYAB1はシロイヌナズナのFILおよびYAB3と同じサブファミリーに分類されたが、FILとYAB3の祖先分子から分岐してウリ科内で独自に進化したと予想されたことから、この過程でCmTCP1と相互作用する機能を獲得して巻きひげの発達(葉身の変形)に関与するようになったと考えられた。これらの研究成果について、現在、論文の作成を進めているところである。
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