研究課題/領域番号 |
21K05585
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
山根 崇嘉 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 上級研究員 (70523116)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 水ストレス / モモ / 画像解析 |
研究実績の概要 |
今日の果樹栽培において、水分管理による高品質化は必要不可欠な技術として認識されている。モモにおいては水ストレスが糖度を上昇させることが知られている一方で、果実肥大を抑制し、渋みを発生させることが知られている。これらの影響は果実の発育ステージ(細胞分裂期、硬核期、細胞肥大期)により異なり、果実の発育ステージに応じた精密なかん水制御が必要となる。一方、果樹のかん水は無降雨日数に基づき経験的に実施されており、生産者の達観に基づく。一部の生産者は土壌の乾燥程度を計測しているが、果樹の根は深く広がっており、土壌の計測部位に必ずしも根が伸長しているとは限らず、表層の土が乾いていても樹は水ストレスを受けていないことが多い。適切なかん水のためには、樹の水分状態を適切に把握することが鍵となるが、樹の水分状態を計測するためには高額な機器が必要となる。 本研究ではモモ樹の乾燥過程において、レーザー距離計を用いて萎れ過程での葉先端部の移動距離を計測し、同時に葉を蒸散抑制袋で覆い、樹の水ポテンシャルを計測した。その結果、葉の萎れ過程での移動距離は樹の水ポテンシャルと非常に高い相関を示すことを明らかとなり、葉の萎れ程度から樹の水ポテンシャルを推定できることが明らかとなった。葉の萎れ程度を画像から評価する場合、葉の移動距離が大きい葉に注目し、移動量を計算することが有効であった。 また、定点カメラによらずに水ストレス程度を簡易判別するため、スマートフォンのカメラで樹を様々な方向から撮影した画像について深層学習を用いて学習させた結果、ストレス程度の違いに基づき5段階に区分した樹の画像を高い精度で判別することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乾燥過程の葉の変化としては、葉の移動量、萎れ角度や葉同士の重なり部分の面積などの変化も考えられる。本研究ではこのような変化量の中から水ポテンシャルを最も的確に表す指標を探索した。その結果、葉の領域を二値化で抽出し、時間ごとの画像を重ね合わせることで変化量を推定することに比べ、移動量の大きい葉の先端部に注目する方が安定して萎れ程度を評価できることを明らかにした。 次に水ストレス程度の異なる樹の水ポテンシャルを計測すると同時に、スマートフォンのカメラで樹を様々な方向から撮影した2万枚以上の画像について、水ストレス程度を5段階に区分して深層学習を用いて学習させた結果、一定程度水ストレス程度を判別することができた。
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今後の研究の推進方策 |
水ストレスを受けて萎れる過程の葉の移動量を画像から自動で算出するためには、時系列画像から変化量の大きい部位を抽出する必要がある。この時、注目する葉以外の背景に映るものを除外する必要がある。そのため、オプティカルフローなどの画像解析技術を用いて解析していく。 深層学習においては、モモのポット樹を用いて水ストレス程度の異なる樹を作出してきたが、地植え樹などの栽培条件で判別するためには、異なる栽培条件での画像を学習させていく必要があるので、地植え樹など異なる栽培条件での水ストレス程度の異なる状態の画像を収集し、解析していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
ソフトウエア購入経費が予定より安価であったため。翌年度は画像データ解析のためのコンピュータの購入を行う。
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