硬肉モモは一般的なモモとは異なり果実が成熟期に達しても軟化しない。これまでにモモの軟化にはオーキシンが関与することを明らかにしており、硬肉モモでは、成熟果実においてオーキシン生合成酵素であるYUCCA(PpYUC11)の発現が上昇せず、その原因はPpYUC11の5’上流域においてトランスポゾンが挿入することであると推測されている。本研究では、硬肉モモPpYUC11の発現抑制とトランスポゾンの関与を明らかにするために、トランスポゾン周辺部のメチル化程度について解析し、トランスポゾン挿入がPpYUC11の転写制御に関わる可能性を示唆した。硬肉モモの中には、PpYUC11の5’上流域にトランスポゾンの挿入が認められるにも拘わらず、普通の硬肉モモより、果肉硬度が低下するタイプがある。このような軟らかめの硬肉モモの要因となる因子を探索するため、果肉におけるRNA-seq解析を行った。その結果、普通の硬肉モモより軟らかめの硬肉モモにおいて発現レベルが若干高いまたは低い遺伝子群を選抜した。選抜された遺伝子について、推定される機能から転写因子群や植物ホルモンの生合成、受容に関するものが認められた。更に主に軟化に関わる細胞壁修飾に関する酵素が含まれていた。普通モモも含めた様々なモモ品種におけるこれらの遺伝子発現解析から、硬肉モモにおける硬さの違いには植物ホルモンの関与と、DNAメチル化が関与することが推測された。
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