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2021 年度 実施状況報告書

植物のR遺伝子による病害虫抵抗性誘導のフェーズ移行を捉える

研究課題

研究課題/領域番号 21K05591
研究機関東北大学

研究代表者

宮下 脩平  東北大学, 農学研究科, 助教 (60556710)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードR遺伝子 / 抵抗性 / 細胞死 / 植物ウイルス
研究実績の概要

1)異なるレベルの抵抗性を誘導するCMV変異体シリーズの整備
R遺伝子形質転換体Nicotiana benthamianaに全身壊死(全身HR, SHR)を引き起こす変異体を単離し、CPのT45M変異が原因であることを明らかにした。抵抗性誘導時の細胞間移行におけるMOIの低下は、HR誘導する野生型CPをもつCMVでは約30%なのに対し、この変異をもつCMVでは約13%と小さかった。この違いは両者の抵抗性誘導強度の違いを反映すると考えられた。一方CPのアルギニンリッチモチーフ(13-19番目のアミノ酸残基)の欠失変異体(CPdR)は高度抵抗性ERを誘導することが分かった。この領域のアラニン置換変異によりHRとERの中間的強度の抵抗性を誘導する変異体を複数得た。このうちmicroHRを誘導するものについては抵抗性誘導によるMOI低下が55%程度であることを明らかにした。これらにより、各変異体の抵抗性誘導強度をMOIで数値化して評価する系を確立するとともに、MOIを最終的な表現型とも関連付けることができた。
2)アグロインフェクションによる同期的抵抗性誘導系
アグロインフィルトレーションでCMV各分節をR遺伝子形質転換体N. benthamianaで合成させ、感染させて同期的に抵抗性誘導させる系の確立を試みた。CMV(Y)系統RNA1のcDNAを挿入したバイナリベクタは大腸菌毒性のため作製できたなったことから、RNA1, RNA2についてはCMV(TN)系統のcDNAを利用し、CMV(Y)系統由来RNA3 cDNAとともにアグロインフィルトレーションで導入した。その結果、野生型RNA3でインフィルトレート領域におけるHRを再現できた。CPdRではER誘導を期待したがHRとなった。そこでPVXベクタのアグロインフェクションでCPdRを発現させるとERとHRの中間的な表現型が観察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1)の異なるレベルの抵抗性を誘導するCMV変異体シリーズの整備では、高度抵抗性ERからERとHRの中間的表現型を示すもの、弱い抵抗性を示しSHRを誘導するものなど、多段階の抵抗性誘導レベルを示すCP変異体が得られた。これは期待以上の進展であった。(2)のアグロインフェクションによる同期的抵抗性誘導系ではCMV(Y) RNA1 cDNAの大腸菌毒性により目的のコンストラクトが得られないなどの問題があったものの、CMV(TN)系統の利用によりこれを解決できた。また、ER同期的誘導にむけてPVXベクタの利用も検討しうることが明らかになった。(1)(2)を総合すると、すべてが期待通りではないものの、おおむね順調に進展していると言えるものと考えられた。

今後の研究の推進方策

CMVの3分節を1つのバイナリベクタに挿入したコンストラクトを作製し、アグロインフェクションを行う。また、現在使用している35SプロモータからCMV RNAが合成され続けることがERの完全な再現の障壁になっている可能性が考えられるため、やや弱いプロモータなど、異なるプロモータの使用を検討する。PVXベクタについても同様の検討を行い、同期的ER誘導系の構築を目指す。一方で、同期的HR誘導系はすでに構築できていることから、異なる抵抗性誘導強度のRNA3で植物の抵抗性応答がどのように異なるかを遺伝子発現変動の解析により調べる。

次年度使用額が生じた理由

RNA-seq解析を次年度に回したため、本年度の使用額が小さくなった。また、プロジェクト経費ではない経費(運営費交付金・寄付金等)を中心に本研究を遂行することができたこと、コロナウイルス流行で学会旅費が発生しなかったことなどにより、RNA-seq以外の予定費目についても使用額が小さくなった。次年度ではRNA-seq解析や旅費などで助成金を使用する見込みである。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] ユトレヒト大学(オランダ)

    • 国名
      オランダ
    • 外国機関名
      ユトレヒト大学
  • [雑誌論文] Cucumber Mosaic Virus Infection in Arabidopsis: A Conditional Mutualistic Symbiont?2022

    • 著者名/発表者名
      Takahashi Hideki、Tabara Midori、Miyashita Shuhei、Ando Sugihiro、Kawano Shuichi、Kanayama Yoshinori、Fukuhara Toshiyuki、Kormelink Richard
    • 雑誌名

      Frontiers in Microbiology

      巻: 12 ページ: 770925

    • DOI

      10.3389/fmicb.2021.770925

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 陸上植物の抗ウイルス集団抵抗性~感染個体の死が周囲の血縁個体を守る~2022

    • 著者名/発表者名
      宮下脩平・Derib A Abebe
    • 雑誌名

      化学と生物

      巻: 60 ページ: 55-56

  • [雑誌論文] Plant death caused by inefficient induction of antiviral R-gene-mediated resistance may function as a suicidal population resistance mechanism2021

    • 著者名/発表者名
      Abebe Derib A.、van Bentum Sietske、Suzuki Machi、Ando Sugihiro、Takahashi Hideki、Miyashita Shuhei
    • 雑誌名

      Communications Biology

      巻: 4 ページ: 947

    • DOI

      10.1038/s42003-021-02482-7

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Isolation and Characterization of a Novel Jumbo Phage from Leaf Litter Compost and Its Suppressive Effect on Rice Seedling Rot Diseases2021

    • 著者名/発表者名
      Sasaki Ryota、Miyashita Shuhei、Ando Sugihiro、Ito Kumiko、Fukuhara Toshiyuki、Takahashi Hideki
    • 雑誌名

      Viruses

      巻: 13 ページ: 591~591

    • DOI

      10.3390/v13040591

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] キュウリモザイクウイルスCP発現PVXベクターのアグロインフェクションを利用したR遺伝子抵抗性同期的誘導系2022

    • 著者名/発表者名
      宮下脩平*・狩野凱・石橋和大・安藤杉尋・高橋英樹
    • 学会等名
      令和4年度日本植物病理学会大会
  • [学会発表] 植物ウイルスの細胞間移行における小さいMOIを再現する細胞感染・細胞間移行シミュレーションモデルの構築2022

    • 著者名/発表者名
      平澤花織*・安藤杉尋・高橋英樹・宮下脩平
    • 学会等名
      令和4年度日本植物病理学会大会
  • [学会発表] キュウリモザイクウイルスの細胞間移行タンパク質による多数決型意思決定はドミナントネガティブ効果で説明される2022

    • 著者名/発表者名
      小黒まゆ*・安藤杉尋・高橋英樹・宮下脩平
    • 学会等名
      令和4年度日本植物病理学会大会
  • [学会発表] イルミナシーケンサを利用した省力・低コストな植物 RNA ウイルス網羅的検出・塩基配列決定系の構築2021

    • 著者名/発表者名
      武田萌*・安藤杉尋・高橋英樹・宮下脩平
    • 学会等名
      令和3年度日本植物病理学会東北部会
  • [学会発表] 全身 HR による抗ウイルス自殺型集団抵抗性の成立条件についてのシミュレーションによる検討2021

    • 著者名/発表者名
      宮下脩平*・Derib A Abebe・安藤杉尋・高橋英樹
    • 学会等名
      令和3年度日本植物病理学会東北部会
  • [学会発表] Individual death resulted from inefficient induction of R-gene-mediated antiviral resistance may confer suicidal population resistance in land plants2021

    • 著者名/発表者名
      Derib Alemu Abebe*・Sietske van Bentum・Machi Suzuki・Sugihiro Ando・Hideki Takahashi・and Shuhei Miyashita
    • 学会等名
      International Plant Web Forum 2021, IPSR, Okayama Univ
    • 国際学会
  • [学会発表] キュウリモザイクウイルスの細胞感染シミュレーションモデルの構築2021

    • 著者名/発表者名
      山田省吾*・安藤杉尋・高橋英樹・宮下脩平
    • 学会等名
      日本植物病理学会 令和3年度植物感染生理談話会
  • [学会発表] Local propagation of land plants may enable their R-gene-mediated suicidal population resistance2021

    • 著者名/発表者名
      Shuhei Miyashita*・Derib Alemu Abebe・Sietske van Bentum・Machi Suzuki・Sugihiro Ando・Hideki Takahashi
    • 学会等名
      Plant Microbiota Research Network 1st Online Symposium
  • [学会発表] Local propagation of land plants may have enabled their suicidal population resistance against viruses.2021

    • 著者名/発表者名
      Shuhei Miyashita
    • 学会等名
      10th Aquatic Virus Workshop
    • 招待講演
  • [図書] 生産環境統計学2022

    • 著者名/発表者名
      岸野 洋久ほか
    • 総ページ数
      240
    • 出版者
      朝倉書店
    • ISBN
      978-4254405743

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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