研究課題/領域番号 |
21K05594
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
宇佐見 俊行 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 准教授 (50334173)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 植物病原糸状菌 / 病原性 / 糸状菌 / 土壌伝染病 / 菌類 |
研究実績の概要 |
ナスに病原性を示すVerticillium dahliaeと、示さないV. longisporumに、それぞれ異なる抗生物質の耐性遺伝子を導入し、擬有性生殖により異種間の遺伝的交雑を試みた。その結果、両方の抗生物質耐性を併せ持つ菌株が得られた。得られた菌株をマイクロサテライトマーカーで解析したところ、ほとんどがV. dahliae(n)とV. longisporum(2n)のゲノムを併せ持つ3倍体に近い状態で安定していた。そこで、ベノミルを添加した培地でこれらを培養したところ、染色体の脱落が誘導され、一部には半数体と思われる菌株も認められた。一方、「ササゲに強い病原力を示すV. alfalfaeと病原力の弱いV. dahliae」、「オクラに強い病原力を示すV. longisporumと病原力の弱いV. alfalfae」の組み合わせでも同様に異種間の遺伝的交雑を試みたところ、いずれの場合も遺伝的雑種を作出することに成功した。特に、V. dahliaeとV. alfalfaeの組み合わせにおいては、染色体構成が安定した半数体の菌株を多数作出することができた。これらの菌株は、V. dahliaeの微小菌核、V. alfafaeの暗色休眠菌糸の特徴を合わせ持つ中間的な形態の耐久生存体を形成した。さらに、これらの菌株をササゲに対して接種したところ、明確な病徴を示すものと、ほとんど病徴を示さないものがあった。このように、交雑により得られた菌株では耐久生存体の形態やササゲに対する病原性にも多様性が認められ、遺伝的に多様であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、異種間の遺伝的雑種を作成できるかどうかがひとつの大きなハードルと考えられていたが、その作出には成功した。特にV. dahliaeとV. alfafaeでは、遺伝的に安定した半数体の交雑株も得られた。これらの菌株についてはすでに病原性試験や遺伝的解析にも取りかかっており、研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
V. dahliaeとV. alfafaeの遺伝的交雑株については、引き続き病原性試験と遺伝的解析を進める。V. longisporumを用いた交雑株については、親株が融合した3倍体の状態で安定する傾向が見られるため、ベノミル添加培地での培養により、半数化を試みる。一方で、半数化やその後の遺伝的解析が困難となった場合に備え、オクラに対する病原力が大きく異なるV. alfalfae同士の交雑など、様々な種や系統を用いた遺伝的交雑も試みて、病原性の解析に適したものを見出す。
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