研究課題/領域番号 |
21K05595
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐藤 育男 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (70743102)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生物防除 / 赤かび病 / かび毒 / デオキシニバレノール / DON分解細菌 |
研究実績の概要 |
コムギ赤かび病菌等により産生されるかび毒デオキシニバレノール(DON)は人畜に毒性を示すだけでなく、コムギに対する病原性因子でもあることから、DON分解微生物を用いたコムギ上でのDON低減は赤かび病の発生も抑制できる可能性がある。本年度は申請者らがこれまでに分離したDON分解細菌13株を用いて、コムギ小穂(品種USU-Apogeeおよび農林61号)での赤かび病の発病抑制試験を行った。その結果、有意に発症を抑制する細菌株が4株見いだされ、小穂上のDONの蓄積量にも低下傾向が見られた。この結果は、過去に申請者らが開発した簡便な試験法である発芽コムギを用いたPetri dish test(Morimura et al, 2020)の結果と相関を示していたことから、Petri dish testが有効なスクリーニング系であることが改めて示された。 DON分解細菌によるコムギ上での赤かび病発症抑制効果が、DON分解によるものか明らかにするため、DON代謝低下変異体の作出し、発症抑制試験を行った。DON代謝変異株の作出については、コムギ小穂上で赤かび病発症抑制効果を示したNocardioides sp. SS3株を用いて、UV照射により変異体の作出を試み30000コロニーの中から2株のDON代謝低下株を選抜した。これらの変異株を用いて、コムギ2品種の小穂上で発症抑制試験を行ったところ、品種USU-Apogeeでは変異体2株による発症抑制効果が野生株比べ有意に低下し、DON分解能の欠損による抑制効果低下が示唆された。一方で、品種農林61号による同試験では野生株処理と有意な抑制効果の差は見られなかった。従ってDON分解細菌がコムギ上でDONを分解することによる発症抑制効果への寄与の程度はコムギ品種により異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コムギ小穂を用いた発症抑制試験で、DON分解細菌が赤かび病の発症およびDON蓄積双方の防除が可能であることを示唆することができた。また発症抑制効果を示したDON分解細菌のDON代謝能低下変異株の作出に成功し、それら変異株の赤かび病防除能が低下することを明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
DON分解細菌による赤かび病防除機構について解析する。蛍光タンパク質導入赤かび病菌を作出し、コムギ上にDON分解細菌と同時接種し、動態やDONに蓄積量について調査する。
DON分解細菌のDON代謝酵素について明らかにするために、DON代謝能低下変異株のゲノムを解析し、変異箇所を同定する。すでに、前述のSS3株とは別にDON代謝能低下変異株を20株選抜できているので、それら変異株ゲノム解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初見込んだゲノム解析の外注ができなかったため、次年度に実施使用する。
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