研究課題
植物が構成的に備える内生サプレッサーの精製がシロイヌナズナで進められ,その1つが CEP5 ペプチドであることが明らかにした.実際,合成した CEP5 ペプチドで処理した植物体では MAMP 誘導性の ROS 生成やカロース生成は抑制され,不適応型菌に対する感受性が誘導される.シロイヌナズナが生成する CEP ペプチドについては,アミノ酸配列の相同性からグループⅠ(CEP1-12)およびⅡ(CEP13-15)に分類される.今年度は,グループⅠから CEP1,3,5,グループⅡから CEP14 を合成し,これらの免疫や成長に対する作用の冗長性と特異性について調べた。その結果,グループⅠのペプチドには CEPR1 に依存した根の伸長抑制作用が認められたが,CEP14 ペプチドにはないことが示された.一方,flg22 誘導性の ROS 生成とカロース生成を指標として調べたところ,いずれのペプチドも濃度依存的に抑制した.以上から,CEP ペプチドによる根の伸長抑制作用はグループⅠのペプチドに限られ,それらは CEPR1 を介していること,また免疫に対する抑制作用はグループ間で冗長性があり,これには CEPR1以外の未知のレセプターの関与が推測された.一方,CEP ペプチドの窒素飢餓(非生物的ストレス)および病原菌接種(生物的ストレス)下での全 CEP遺伝子(CEP1-15)の応答について解析した結果,飢餓に応答してグループⅠの CEP 遺伝子が誘導されたのに対して,病原菌応答時にはグループⅡを含むほぼ全ての遺伝子が活性化された.グループⅠの CEP ペプチドの全身的窒素獲得応答(N 源獲得)への関与を考慮すると,CEP ペプチドの役割は防御応答の収束(緩和)に留まらず,免疫応答に伴うN源の消費を補償して防御応答収束後の成長プロセスへの円滑なシフトを可能にしているものと考えた.
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Physiological and Molecular Plant Pathology
巻: 125 ページ: 102019
10.1016/j.pmpp.2023.102019
細胞
巻: 55(9) ページ: 78-82