研究課題/領域番号 |
21K05598
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
加藤 尚 香川大学, 農学部, 教授 (50222196)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 環境配慮型農業 / アレロパシー / イネ / イヌビエ |
研究実績の概要 |
我々は,イネは根からアレロパシー物質モミラクトンを分泌していることを発見し,モミラクトン欠損変異体イネの研究等から,モミラクトンはイネの主要なアレロパシー物質であることを明らかにした.また,イヌビエはイネ栽培の主要雑草であるが,イヌビエの根分泌物をイネに与えるとイネのアレロパシー活性が約4倍増加することを見いだした.本研究では,イヌビエの根分泌物のなかでイネのアレロパシー活性を増加させる主成分(物質X)を明らかにし,その増加の仕組みを解明することである.当該年度は,イヌビエ根分泌物に含まれイネのアレロパシーを増加させる主成分(物質X)を明らかにする.そのため,イヌビエを無菌的に水耕栽培し,水耕栽培液を十分量集めた.水耕栽培液はハイポーラスポリマーで濃縮し,その後シリカゲルクロマトグラフィー,セファデックスLH-20クロマトグラフィー,C18カーボンカートリッジで順次分離した.それらの各分離段階では,すべての分離画分のイネのアレロパシー誘導活性を測定し,アレロパシー誘導活性のあった画分を次のクロマトグラフィーに供することで物質Xの分離精製を試みた.なお,アレロパシー誘導活性は,分離画分をイネ芽生えに与えて,イネのアレロパシー活性を測定することで決定した.現在,物質Xの分離の最終段階であり,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分離を行っており,アレロパシー誘導活性をもつ物質のピークをHPLCのクロマトグラム上で特定することができている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の目的は,イヌビエ根分泌物に含まれイネのアレロパシーを誘導する主成分(物質X)の分離精製を行うことである.現在までに,イヌビエ根分泌物を含むイヌビエ水耕栽培液を集め,その水耕栽培液を各種のクロマトグラフィーで順次分離した.物質Xを確実に分離するために,各クロマトグラフィーでの分離後,すべての分離画分のアレロパシー誘導活性を測定し,アレロパシー誘導活性のあった画分を次のクロマトグラフィーに供することで物質Xの分離精製を試みた.現在,物質Xの分離精製の最終段階である.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分離を行っており,アレロパシー誘導活性をもつ物質のピークをHPLCのクロマトグラム上で特定することができている.
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今後の研究の推進方策 |
イヌビエ根分泌物に含まれイネのアレロパシーを誘導する主成分(物質X)の物質Xの分離の最終段階まで進んでいる.精製単離した物質Xは,質量分析,H-NMR,C-NMRのスペクトルデータ等をもとに構造を決定するが,分析に必要な物質量を集める必要がある.そのため,物質Xの物質量が十分でない場合,再度イヌビエ水耕栽培液を集め物質Xの精製単離を行う必要がある.構造解析に必要な物質量が集めることができれば,質量分析,H-NMR,C-NMRのスペクトルデータ等をもとに物質Xの構造を決定する.
また今後,物質Xによるイネのアレロパシー活性の誘導がモミラクトンの分泌量の増加で説明できるのかどうかを検証する予定である.そのため,物質Xをイネ(コシヒカリ)芽生えに投与して,モミラクトンの生合成と根からの分泌量を測定することで,物質Xによるイネのアレロパシー活性の増加が,モミラクトンの分泌量の増加で説明できるかどうかを検証する.さらに,モミラクトン欠損変異体イネ(cps4, ksl4)は,モミラクトン生合成能力を失っているが,物質Xをこれらのイネに与えてアレロパシー活性の変動の有無を観察する.イヌビエの根分泌物をイネに与えるとイネ(コシヒカリ)のアレロパシー活性が増加するが,これらのモミラクトン欠損変異体イネでアレロパシー活性の変動がなければ,物質Xによるイネのアレロパシーの増加にモミラクトンの生合成が重要な役割を持っていることが証明できる.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響などで予定していた国際学会やその他の研究集会への出席ができなかった.
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