研究課題/領域番号 |
21K05600
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松尾 和典 九州大学, 比較社会文化研究院, 助教 (90741281)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 畜産害虫 / 保全的生物的防除 / 寄生蜂 / サシバエ |
研究実績の概要 |
サシバエ(ハエ目:イエバエ科)は、家畜の安寧阻害や病原体の媒介をする畜産害虫として知られている。現状の防除法は、農場の構造や飼養規模によっては十分に機能しておらず、早急な対策構築が求められている。そうした中、申請者はサシバエの天敵寄生蜂キャメロンコガネコバチ(ハチ目:コガネコバチ科)を国内で初めて発見し、その有効利用を検討している。本研究では、①国内の寄生蜂相の解明・②重点調査地における発生消長の解明・③サシバエと主要寄生蜂の地理的遺伝構造の解明をとおし、保全的生物的防除の基盤を整備することを目的としている。①に関して、本年度は、愛知県、兵庫県、福岡県、鹿児島県、沖縄県において、堆肥を掘り起こしサシバエ蛹を探索した。すべての地点でサシバエ蛹が採集でき、また、Spalangia属の寄生蜂も採集された。予備的な観察では、得られた寄生蜂はS. cameroniの可能性があり、今後、さらに詳細に観察をすすめ、種の同定を行う。北海道、岩手県、栃木県、愛知県、岡山県、福岡県、鹿児島県、沖縄県では、おとり蛹調査を実施し、寄生蜂の採集を試みた。福岡の調査地で数頭のSpalangia属寄生蜂が得られたものの、他の地点では寄生蜂は得られなかった。おとり蛹調査法は簡便な寄生蜂採集方法として期待されるが、技術的な更新が必要と考えられた。以上の調査から得られたサシバエやその天敵寄生蜂は、今後、③の遺伝子解析に供試する個体とする。②に関して、重点調査地として設定していた福岡県ではパンデミックの影響を受け、発生消長調査は1-7月までの実施に留まってしまった。サシバエの蛹が見つかるようになったのは、3月下旬で、その密度は1.7蛹/堆肥1Lであった。その後、蛹密度は上昇し、7月には94.2蛹/堆肥1Lまで上昇した。寄生が見られたのは5月からで、寄生率は15.2%であった。7月まで同程度の寄生率で推移した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パンデミックの影響を受けつつも、確保できた調査機会においては確実にサシバエやその天敵寄生蜂が採集されている。また、サシバエの発生密度やその寄生率のデータも蓄積されている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の採集は西日本を中心に行われていた。来年度は東日本での採集を行い、全国各地のサシバエやその天敵寄生蜂の個体を収集したい。こうして得られた個体を用いて、地理的遺伝構造の解明に取り組む。
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