研究課題/領域番号 |
21K05602
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
本間 淳 琉球大学, 農学部, 協力研究員 (90527897)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 繁殖干渉 / 不妊虫放飼法 / 総合的害虫管理 / 侵入害虫 / ミカンコミバエ / ナスミバエ / ウリミバエ |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、近縁種による繁殖干渉を利用して複数の侵入害虫を同時に防除・根絶する、新しい不妊虫放飼技術(不妊虫干渉)を確立するための基礎研究を行うことにある。日本国内には生息しない特殊害虫であるこれらの害虫ミバエ類の飼育には特別な施設と許可が必要であったため、これらが生息する台湾の農業試験場と共同実験を行う計画であったが、コロナ禍による海外渡航の制限により経過どおりに実験を進めることができなかった。しかし、令和3年度からミカンコミバエの飼育許可を植物防疫所から得ることができたため、沖縄県に再侵入したミカンコミバエを創始集団として累代飼育系統を確立した。令和4年度はこの飼育系統を、実験供試虫を安定的に供給できるような飼育システムの確立を行った。 この累代飼育虫を用いて、まず、繁殖干渉実験を行う上での基礎情報ともなる配偶行動の観察を行った。また、オス除去法の防除資材が存在する状況下での配偶行動についても網室を用いた実験を行い、日本応用動物昆虫学会での発表を行った。また、近年になり海外からの入り込みの事例および地域が急速に拡大しつつある本種について、ミトコンドリアDNAの配列情報を用いることにより、その元となる地域の推定を行った。この成果については上記学会とともに害虫ミバエ類を対象とした国際学会であるInternational Symposium on Fruit Flies of Economic Importanceにおいて口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題における主な実験は台中の台湾農業試験所に赴き、当地の共同研究者とともに行う計画であったが、令和4年度においてもコロナ禍で台湾への渡航が困難となってしまったため、計画通りに研究を進めることができなかった。そのかわり、特殊病害虫の飼育が可能な施設である、沖縄県病害虫防除技術センターでもミカンコミバエを飼育する許可を得て、実験用の飼育虫を安定的に供給できる体制を整えた。同時に、ナスミバエについても沖縄県内の圃場から野生個体を採集し、ミカンコミバエ同様に実験用飼育虫の供給体制を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
沖縄県病害虫防除技術センターで飼育しているミカンコミバエおよびナスミバエを用いて室内ケージスケールでの実験を初夏までに終了させる予定である。この実験で琉種間の繁殖干渉の強さに関するパラメータの推定値を得ることで、繁殖干渉を組み込んだ不妊虫放飼法の実際的な効果をシミュレーションモデルによって評価する。研究課題の最終年度である令和5年度は、これらの研究結果をまとめ、論文執筆を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため参加および研究内容の発表をを予定していた学会がオンライン開催となったため、使用する予定であった旅費が未使用となった。未使用分は次年度の消耗品費として使用する予定である。
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