研究課題/領域番号 |
21K05605
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
久保田 健嗣 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物防疫研究部門, 上級研究員 (80414796)
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研究分担者 |
津田 新哉 法政大学, 生命科学部, 教授 (60355500)
鍵和田 聡 法政大学, 生命科学部, 講師 (20431835)
武井 円 法政大学, 生命科学部, 助手 (80867606)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フシダニ / エマラウイルス / シソサビダニ / シソモザイクウイルス / RNA-seq / 媒介 / 局在 / 増殖 |
研究実績の概要 |
本研究の対象であるシソサビダニは、これまでShevtchenkella sp.とされてきたが、詳細な形態比較等に基づく分類学的同定は不十分であった。1889年にNalepaにより記載された、オーストリアのイブキジャコウソウから採取されたフシダニの標本との比較において、形態的差異は認められず、シソサビダニはAculops thymi であることが判明した(Kadono et al. 2022)。 シソサビダニのPerMV保毒虫および無保毒虫を回収し、全RNAを抽出し、RNA-seq解析を行ったところ、両者各約5400万リードから4.8万および1.8万のコンティグ配列が得られ、微小なフシダニのRNA-seq解析が可能であった(久保田ら,未発表)。シソサビダニによるPerMVの媒介能力の簡易的な試験法の開発のため、シソ葉のリーフディスクを用いた媒介試験系を構築したところ、接種吸汁は最短15分で成立することが示唆され、シソ株を用いた試験でも同様の結果が確認された(新井ら, 2022)。PerMVの感染植物およびシソサビダニ虫体内におけるPerMVの局在性の解明のため、超薄切片法を用いて電子顕微鏡観察を行った。その結果、虫体の器官構造が観察され、シソ葉からはDMBsと思われる構造が観察されたものの、このような構造が見られたのはごく一部であり、粒子の大きさも多様であったため、さらに検討する必要がある(鍵和田ら,未発表)。シソサビダニはPerMV感染シソ葉上では、非感染葉に比べて発育期間が短くなる傾向が見られた(武井, 未発表)。 この他、エマラウイルスおよびフシダニ類に関して、シキミからの新種エマラウイルスの発見(Shimomoto et al. 2022)、日本に発生するナシ葉退緑斑点随伴ウイルスの遺伝的多様性の解明(竹山ら, 2022)等の実績が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体としては概ね当初の計画通り進捗しており、シソサビダニのPerMV保毒虫および無保毒虫からのRNA-seqデータが得られたことから、引き続き解析を進めている。媒介試験については、シソのリーフディスクを用いた簡易媒介実験系を構築し、本実験系を用いた最短接種吸汁時間は15分であったが、シソ株への接種においてもこの時間での感染成立が確認された。PerMV感染シソ葉でのウイルス粒子形態観察では、DMBsと思われる構造が観察された。一方でPerMV保毒シソサビダニ虫体内からは明瞭な粒子は観察できておらず、手法の改良が必要と考えられる。また、PerMV感染によるシソサビダニの増殖性への影響についても、現時点で明瞭な結果が得られていないことから、より影響が明確に観察される実験条件に改良し、研究を進める
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今後の研究の推進方策 |
シソサビダニのRNA-seqデータの解析に加え、シソ葉のシソサビダニ寄生・非寄生、PerMVの感染・非寄生でのRNA-seqデータを取得し、宿主植物遺伝子発現に対するサビダニ寄生・ウイルス感染の影響を評価する。PerMVの媒介性および植物体内および虫体内の局在性解析について手法の改良を加えながら引き続き解析を進めるとともに、PerMV感染によるシソサビダニ増殖への影響を定量的に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
シソサビダニおよびPerMVの実験に用いる消耗品(器具、試薬類)が定価より安価に購入できたケースがあったため、余裕が生じた予算分を次年度に繰り越して使用することとした。次年度においても引き続き実験に必要となる、植物の栽培、シソサビダニの飼育、ウイルスの検出、RNA-seq解析等の消耗品類、および契約職員賃金等に充当する計画である。
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