研究課題/領域番号 |
21K05609
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
堀田 光生 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 主席研究員 (10355729)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 土壌還元消毒 / 嫌気性細菌 / 低濃度エタノール |
研究実績の概要 |
土壌病原菌(トマト萎凋病菌)を埋め込んだ土壌に、1%エタノールまたは蒸留水を加えて密封することで土壌還元消毒試験を行った結果、エタノール処理区では酸化還元電位が急速に低下し、4日目以降に病原菌が死滅するとともに、土壌溶液中から殺菌物質である酢酸と二価鉄が検出された。その後、酢酸濃度が徐々に低下し、二価鉄も土壌溶液中から検出されなくなるものの、土壌に吸着した状態で急速に蓄積するのが確認された。一方、蒸留水添加区では、酸化還元電位の低下および病原菌の死滅は確認されず、酢酸、二価鉄も全く検出されなかった。 次に、還元消毒処理中の土壌を経時的に採取してDNAを抽出し、土壌微生物相の変化(微生物の種類やそれらの存在比の変化)を、次世代DNAシーケンサー等を用いて比較・調査した。その結果、エタノール処理区では、蒸留水処理区に比べ、Pseudomonas属菌や、一部の嫌気性細菌(Clostridium属菌、硫酸還元菌であるDesulfotomaculum属菌、Desulfosporosinus属菌等)の存在比が常に高い傾向を示した。 次に、これら細菌種の動態を詳しく調査するため、種特異的な定量PCR用プライマーを作出して、検量線の作成を行った結果、土壌からの定量化が可能になった。また、これら細菌種を特異的に分離・培養可能な選択培地を用いて採取土壌から細菌の分離を行った結果、硫酸還元菌等一部の細菌種については、分離・計測が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は使用施設の故障等により、予定していた試験の一部が行えなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
還元消毒効果が安定的に得られる条件と安定しない条件(処理温度や添加する有機物濃度を下げる)での比較試験を行い、土壌微生物相等の変化を調査し、消毒過程に関与すると推定される土壌微生物種を特定する。 消毒過程に関与すると推定された土壌微生物種については、定量PCR等の手法を用いて還元消毒中の動態を経時的に調査し、同時に殺菌物質の生成・蓄積量を調査することで、これら微生物種の還元消毒過程における役割を明らかにする。 次に、性質の異なる農耕地土壌(黒ボク土、灰色低地土、砂質土等)を用いて、還元消毒試験を行い、特定された微生物種の増殖量、殺菌物質の生成量、土壌特性の変化等を引き続き比較・調査するとともに、用いた土壌の特性(化学性、物理性)や環境条件の中で消毒効果に影響すると考えられる要因を明らかにする。 最終的に、上記の実験で得られた結果を基にデータをとりまとめ、広範囲で安定して適用可能な還元消毒条件について提示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当該年度(2021年度)は、試験を予定していた温室施設の故障およびその修理に時間を要し、試験のかなりの部分を次年度に延期した。同試験に必要な試薬類は長期保存が難しいため、物品購入自体も次年度以降に行うことにした。また、同試験のために補助員の採用を予定していたが、試験自体の延期にともない、次年度以降に雇用を開始することにしたため。 (使用計画) 次年度(2022年度)は、2021年度に予定していた温室試験等を行うため、できるだけ速やかに物品購入および補助員の採用を行い、同試験を順次進めて遅れを取り戻すとともに、2022年度に予定していた試験もできるだけ早く進めることにしており、そのため、繰り越し分と合わせた予算を使用する予定である。
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