土壌病原菌(トマト萎凋病菌、Fusarium oxysporum f.sp. lycopersici)を埋め込んだ土壌に、1%エタノールまたは蒸留水を加えて密封することで土壌還元消毒試験を行った。土壌還元消毒では、低温条件の処理で消毒効果が安定しなくなる事が知られている。今回、消毒効果が安定しない20℃および効果が安定する30℃で処理した場合の各種土壌特性の変化等について、ポット試験による比較調査を行った。試験場内の黒ボク土を用いた試験では、30℃処理区で処理4日目以降に酸化還元電位(Eh)が急速に低下するとともに、エタノールが分解・代謝されて、病原菌に殺菌効果を示す物質である酢酸および二価鉄が生成・蓄積し、7日目に、事前接種した病原菌が検出されなくなった。一方、20℃処理区では、処理7日目以降にEhが徐々に低下したが、10日目まで酢酸、二価鉄が検出されず、病原菌も生存していた。還元消毒処理中の土壌を経時的に採取してDNA抽出し、土壌微生物相の変化をアンプリコンシーケンス解析およびリアルタイムPCRを用いて比較調査した結果、30℃処理区では処理4日目以降に一部の嫌気性細菌(Firmcutes門に属するClostridium属菌および硫酸還元菌として知られるDesulfosporosinus属菌等)の割合が急速に高くなったのに対し、20℃処理区ではこれら細菌種の割合が高くなるのが大幅に遅くなり、還元消毒効果と、これら細菌種の増殖および殺菌物質の生成が密接に関連していることが推測された。
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